岸田政権下のDFFT(2)2021年G7・G20での変質:その①G7コーンウォールまで

はじめに・お詫び

 

大した理由もなく半年ほど執筆中断しておりました。

更にこれから展開するDFFT論についても、実は半年前にほぼ内容を書き終えたまま放ったらかしにしていたものです。引用する記事内容も知見もほぼ半年前の古いものです……が、実際のところ当時からDFFTに関する動きは世界中で殆ど見られていなかった事ととりあえず一区切りと考えたこともあり、以前作成した記事を若干手直しして公開させて頂きます。

 

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岸田政権下のDFFT(1):経済安全保障とG20サミットからの続きとなります。

G20とG7それぞれにおけるDFFTの、今までの扱いと背景を確認しましょう。

 

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1.2019年G20大阪サミットとG7フランス

1)大阪サミットでの萌芽

 

まずDFFTがサミットの場で大々的に提唱されたのは2019年6月、日本主催のG20大阪サミットでした。

www.mofa.go.jp

イノベーション:デジタル化、データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(信頼性のある自由なデータ流通)』と題された第4章においてDFFTの役割を示しています。

 

Society5.0(抽出データの結合と社会インフラにより情報・物質世界が密接に活用・フィードバックされる社会)を経済的・包摂的な未来社会としたうえで、自由なデータ流通がもたらす未来社会への恩恵及びセキュリティやデータ保護ルールの課題という双方の対処を提唱、各国で異なるデジタルの国内法枠組みを尊重しながら相互運用性を促進するための課題を抽出し話し合う。

 

この時点ではいささか抽象的で、また国内法枠組みの下りについては日本政府が自主的に提案したというより、DFFT反対派からの働きかけだった点もあります。とはいえ日本発のDFFTの起点はここであり、各国のデータ保護に対するスタンスを整理しながら、より自由で国家相互間の信頼を再構築しうる枠組みを整備しようとしたことが伺えます。

 

日本のDFFTが当時のファーウェイ問題を背景としていることは念頭に置いて良いでしょう。ファーウェイ問題は国内外のデータを悪用する特定国家の信頼性を低下させたのは勿論ですが、それ以上に結局自らがデータ保護に走らざるを得ないという形で各国の相互発展への信頼まで失わせるのに十分なものでした。

DFFTの役割はデータ流通の国際ルール策定と遵守によるconfidence醸成だけでなく「貿易と地政を巡る緊張」を緩和させ各国のTrustを回復させる、という大阪サミットの全体テーマに繋がる側面まで担っていた訳です。

 

※ただし欧米とのコンセンサスを得る過程で非欧米諸国のデータポリシーを軽視する傾向が生じたこと、後の日英EPAやRCEPといった実効の場でもこの傾向を修正しない事など、DFFTの実例化を急ぐあまり日本の管轄省庁がデータポリシーに対する多面的な吟味を怠る問題が生じました。これも後述するDFFTイニシアティブ失陥の一因と思われます。

 

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2)G7パリ閣僚会合とビアリッツサミット

 

一方で同2019年フランス主催のG7サミット、特に5月パリ開催のデジタル関係閣僚会合では日本提唱のDFFTについて事前に打診があったであろうにも関わらず、その記述は全くありません。

代わりに主催国フランスにより提唱されていたのが、同デジタル会合の表題となっていた”Building Digital Trust Together"です。特に第3章ではRules of Law(法の秩序・支配)の尺度での国家監視に言及する、二元論的経済安全保障に近い概念を示していました。

データ流通分野におけるルール順守を」通じたconfidenceを具体的な特定国家とのTrust形成の糸口にするのではなく、抽象的に法の秩序・支配の遵守に関してTrustを構築していない国家にはデータ流通へのconfidenceも与えない、という逆側の、欧米流の概念です。

同時にこの時点でのG7での二元論は未だアンチ・データローカライゼーションイニシアティブを反権威主義に反映させたに過ぎず、当時直面していた米中対立という具体的危機に落とし込むものですら無かったのです。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000619958.pdf

※Rules of Lawが複数形であり、複数のconfidenceを積み重ねた末初めて構築可能なTrust要件であることに留意してください。またここでいうRules of Law、法の支配については各国でブレ幅が大きく、日本政府特に当時の河野外相とは違う概念であることを理解しておくと良いでしょう。

 

……とはいえ日本側による様々な交渉の末、同年8月本番のG7ビアリッツ・サミットでは成果文書の一つ「開かれた自由で安全なデジタル化による変革のための戦略」の一節にDFFTを盛り込むことに成功。

法の秩序・支配が前提となる”Building Digital Trust Together"に代わり「国内及び国際的な法的枠組みを尊重した上での変革を各国に求める」DFFTが先進7か国のデジタル目標にも収まり、最終的にG20・G7双方のデジタル議題としてDFFTが取り扱われることになった訳です。

 

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2.2021年サミットにおける変質

1)2021年G7閣僚会合・G7ロードマップ作成まで

 

その後サミット関係では2020年3月のアメリカ主催G7首脳テレビ会議でこそコロナ・アフターコロナに集中した首脳宣言にDFFTの文字はありませんでしたが、同年7月のG20サウジ・デジタル経済大臣会合では第2章、”Data Free Flow with Trust and Cross-Border Data Flows”において3方面の法的枠組みに言及。

G20メンバーは以下を含む正当な公共政策目標に偏見を持たず、データの自由な流れと消費者・ビジネスの信頼をさらに促進できる、関連する適用可能な法的枠組みに従い、これらの課題に対処する必要性を認識しています。

  • データポリシー、特に相互運用性と転送メカニズムの経験と良い慣行を共有し、DFFT(訳注:原文は”data to flow across borders with trust”)に使用される既存のアプローチと手段の共通点を特定する。
  • 貿易とデジタル経済の間のインターフェースの重要性を再確認し、電子商取引に関する共同声明イニシアチブの下で進行中の交渉に関し、WTOにおける電子商取引に関する作業プログラムの重要性を再確認する。
  • プライバシー強化技術(PED)などの技術を探求し、より深く理解する。

 

11月のリヤド・サミットでも首脳宣言第19章「デジタル経済」に

>(前略)我々はDFFT及び越境データ流通の重要性を認識する。我々は開発のためのデータの役割を再確認する。我々は、プライバシー、データの保護、知的財産権及び安全性に関連する諸課題に対処しつつ、開かれ、公正で、無差別的な環境を促進するとともに、消費者を保護し、消費者に能力を与えることを支援する。関連する適用可能な法的枠組みと整合的な形でこれらの課題に引き続き対処することにより、我々は、データの自由な流通を更に促進し、消費者及びビジネスの信頼を強化することができる(後略)

と、デジタル格差の是正や「デジタル経済におけるセキュリティに関するG20事例集」「G20人工知能(AI)原則を推進するための国内政策例」「G20スマート・モビリティ・プラクティス」「デジタル経済を評価するための共通の枠組みに向けたG20ロードマップ」といった取り組みに先駆けて、DFFTへの取り組みを行う旨明記されました。

 

そして2021年4月イギリス主催のG7デジタル・技術大臣会合においてDFFTは閣僚宣言の6つの柱の一つに選ばれ、(1)データローカライゼーションの特性抽出、(2)各国政策の共通項を糸口とした調整協力、(3)政府による民間データアクセスの合理性検討、(4)データ流通自由化の優先分野設定、という4分野に関する『DFFTに関する協力のための 2021年G7ロードマップ』が作成されています。

対立する政策の問題点抽出や、国際対話に向けた各国政策の共通項探しといったDFFTの具体的アプローチが遂に採択されました。そして従来主にG20で採り上げられたDFFTが、ここにおいて先進国会合G7の場をメインフィールドとした訳です。

 

……とはいえある意味DFFTの流れが純粋に日本発信のものであったのは、この辺りが終幕であった気がします。これ以降は米中対立の構図からG7・G20イデオロギーが乖離した末、その隙を突いてある普遍的概念がDFFTに張り付き始めるのです。

 

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2)2021年G7コーンウォールサミット・経済安全保障への引き込み

 

同2021年6月、イギリス・カーチスベイで行われた G7コーンウォール・サミットが、日本がDFFTのイニシアティブを失う一つの転機であったと思われます。

www.mofa.go.jp

 

首脳宣言上は第34章、デジタル分野に関する章の最初の節として

引き続きデータ保護に関する課題に対処しながら価値のあるデータ主導の技術の潜
在力をより良く活用するため、信頼性のある自由なデータ流通を擁護すること。その
ために我々は、デジタル大臣による「データフリーフローウィズトラストに関する協
力のためのG7ロードマップ」を承認する

という形をとり、DFFTの扱い自体は前述のG7デジタル・技術大臣会合をそのまま引き継いでいます。

 

問題は3つ目の節の部分です。

  1. サイバー空間上の表現の自由に配慮しつつ、児童・ジェンダー保護のための「インターネット安全性原則」を承認
  2. 過激主義者及びテロリストによるインターネット使用への対抗ランサムウェアの犯罪ネットワークへの対処
  3. と同時に、発信国の責任まで追及するべく既存の国際法適用に向けた国連等へ働きかけ

この第3節はデューデリジェンスのもと、サイバー犯罪の責任を犯罪者だけでなく犯罪発信国まで向けるためのものです。これは5月に行われたG7外務・開発大臣会合の流れを受けた更なる米中対立とその後のGGE報告書を経て中露への直接非難が困難になったという背景を受けて記されたものでしたが、結局この形での中国非難に飽き足らなくなったバイデン政権が一歩進んだ対中包囲網を形成しようとしたことは、以前の文章で記した通りです。

一見DFFTの枠外ではありますが、この第3節はG7のデジタル政策に2019フランスサミット時代の二元論的経済安全保障を復活させたうえ、さらにはアメリカとEUでその方針に齟齬が発生する起点にもなりました。

 

つまり今回のG7の主題にDFFTを挙げる際には二元論的経済安全保障から自陣営内での調整まで視野に置くことまで必要なものとなったのです。

 

その後この米欧陣営の経済安全保障政策の齟齬が、AUKUSにおける潜水艦受注問題……オーストラリアによる仏艦発注キャンセルという形で表出したのは記憶に新しいところです。このコーンウォールサミットこそAUKUSや別途文章で触れたサイバー犯罪への対中方針、後には対露制裁にまで繋がるG7齟齬の端緒だったと言えるでしょう。

www.spf.org

 

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このG7コーンウォールサミットを起点とする歩調の乱れを突くように、イタリア主催のG20サミットにはG7の二元論的経済安全保障とは真逆の思想が盛り込まれました。

 

その②G20イタリアに続きます。

 

小ネタ:チェコ政権交代と台湾の小話

DFFTの話は一旦お休み……で、

 

www.jiji.com

>バビシュ首相に対抗する野党5党が8日、連立政権の樹立で合意した。これにより、政権交代がほぼ確実になった

 

2021/10チェコ下院選挙で野党5党が過半数議席を獲得、各党政策の調整の末2021/11/08に連立政権樹立に成功。

4年間続いたバビシュ政権から、野党のうちキリスト教中道右派市民社会党(ODS)党首、フィアラ(Petr Fiala)氏率いる政権へと移行するとの事。

 

ビジネスマンとしての側面を持つバビシュ氏については自身が経営する持株会社に関するEU補助金不正疑惑-AFPBB Newsや、特に選挙直前でのタックスヘイブンを利用した蓄財に関する報道-Bloombergがネックとなり、選挙の敗北に繋がったそうです。

 

一般には環境政策-時事ドットコム移民政策-AFPBB NewsでのEUとの軋轢で知られた人物ですが、この点についてはそこまでチェコ国民の争点となった旨の報道は見られません。というか連立政権首班のODS自体、EUの政策に対しては懐疑的なスタンスをとっていたとされています。

 

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この政権交代に関しては、台湾がひとつのキーワードとなっています。

news.tv-asahi.co.jp

 

2021/10、台湾外交部長がチェコ及びスロバキアへと外遊を行いましたが、その際に対応した(画像左側の)人物のことを覚えているでしょうか。

急死した前任上院議長の意志を引き継ぎ、2020/08に訪台したチェコ上院議長ビストルチル(Miloš Vystrčil)氏です。

wedge.ismedia.jp

 

当時は「チェコが中国依存から脱却したか?」と騒がれましたが、中国に傾倒する-Prague Postゼーマン大統領などチェコ政権中枢からビストルチル氏の行動を非難したり、その後も国家として対中姿勢を明らかにしなかったり……と私を含めた当時のネット界隈も混乱したものです。

 

まあ何という事もない。ビストルチル氏は連立政権首班ODSの副議長のひとりでした。

当時のバビシュ政権や、バビシュ氏の後ろ盾となった(というよりEU以外の西側諸国とも友好を保ったバビシュ氏以上に親中的であった)ゼーマン大統領とは、対中政策を含めて対立する立場であった訳です。

 

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……さて、今後のチェコ政権について一般的に懸念されるのは、恐らく連立5党の政策の相違でしょう。

バビシュ政権と同じEU懐疑派のキリスト教中道右派とされる首班ODSと他の4党、特に左派的な環境政党とされる海賊党(Piratska Strana)ではその政策……特に対EU政策・財政・文化的政策に差があり、最終的に分裂に繋がりかねないと言われています。

 

しかし、下院選挙に向けて作成された両党の政策プログラムを確認すると

www.spolu21.cz↑SPOLU(首班ODSなど3党が加盟する中道右派同盟)ホームページ

www.piratiastarostove.cz海賊党ホームページ

 

EU加盟に代わるものはない(SPOLU)

 

>我々の外交政策の方向性はEUおよびNATOにおけるユーロ大西洋地域におけるチェコ共和国のアンカーに基づいている(海賊党

 

>議会の任期の終わりまでに赤字をGDPの1.5%に減らす(中略)健全な財政のために、我々は財政マーストリヒト基準(訳注3%?)と財政協定(訳注1.5%?)の両方をできるだけ早く満たすことにコミットしている(SPOLU)

 

チェコ共和国マーストリヒト基準を満たすために、2025年までに国家財政赤字GDPの3%以下に減らす(海賊党

 

私たちは原子力エネルギーと分散型再生可能エネルギー、特に屋上太陽光発電、蓄電エネルギーの組み合わせで私たちの未来を見ています(中略)我々はロシアや中国の企業によって建設されないことを条件に、ドゥコバニーでの新しい原子力設備の建設を支持する(SPOLU)

 

現在の原子力発電所の利用を分析し技術、経済、安全の条件を明確にしながら、さらなる開発を進めます。徹底した分析を踏まえ、原子力発電所開発の経済的・安全上のメリットを検討する。いずれにせよ、ロシアや中国などの権威主義体制はこのプロセスに参加しません(海賊党

 

EUはより効果的に対外国境を守らなければならない。ヨーロッパレベルでは、拒絶された亡命希望者のプロセスをスピードアップし、人々の密輸業者と戦い、脆弱な地域で体系的に支援する必要があります。同時に、各EU諸国が独自の移民政策と亡命希望者へのアクセスを自由に選択することを主張する。
>強制クォータを拒否し、EUの国境外の移民に対する解決策を促進する。
移民がヨーロッパへの不確実な行進を行うのを防ぐための最も効果的な方法である彼らのためのまともな条件を確保するため、競合国の近くの難民キャンプのための援助の増加を推し進めます。

労働市場のニーズに応える透明なブルーカードシステムをサポートします(SPOLU)

 

>移民に対するアプローチでは、いわゆるクォータの再配布を義務付けずに、責任ある安全で人道的なソリューションを推進しています。連帯は自発的であると考えられている。
>移民の源泉である国や移民ルートを通じたEUの協力を支援する。EU外への不法移民を防ぎたいと考えています。我々は、亡命申請のための事前審査及び国境手続きの導入を含む、EUの対外国境の保護の強化を支持する。

>FRONTEXの改革を含む、亡命政策と帰還政策に関するEU諸国間の協力を支持する。
>スポンサー・リターンの方針を支持します。
>個人データの保護に重点を置いて、EU内での情報共有を強化します(海賊党

 

……注:海賊党プログラムでは引用した対EU向け政策のほか、滞在移民への国内環境改善政策も含まれていますが、SPOLUではその点が省かれています。これはSPOLU自体が移民に対して寛容なEU政策を嫌い、まずEUに対して移民対策を要請している前提であるためと思われます。

 

……と、一般的な政党観では対EU・財政・環境・移民政策あるいは対中露政策など対立すると思われた政策内容が、実は多岐にわたり類似したものであるのが確認できます。

まるで下院選挙以前から、何らかのすり合わせが行われていたように互いの政策の妥協点に達しているようです。

 

特に海賊党については、2021年5月の取材で党首がかつて対EU・移民政策について急進左派的な意見を持っていたことを「若々しい反乱」と称し、現在では考え方を融和的なものに改めた旨発言しています。

cnn.iprima.cz

 

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細かい違いとしては上記の国内向け移民政策のほか、

  • SPOLUが欧州諸国の他、関係の深いイスラエル・ヴィシェグラード4か国で交流を持つ日本及び韓国・台湾を将来のパートナーと名指ししているのに対し、海賊党の言及は台湾のみ
  • 麻薬について海賊党が「薬物に関する国連条約を含む時代遅れの慣習の更新を支持」しているのに対し、SPOLUは現状対応無し(薬物依存に対する言及程度)

といった所でしょうか。

 

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……こなれない記事ですみません。

海外全般情報整理のリハビリ中という事で、優しい目で見て頂ければ幸いです。

岸田政権下のDFFT:経済安全保障とG20サミット(1)

はじめに

 

最初に、この一連の文章と補論を最後に今後デジタル方面にむやみに首を突っ込むことはやめようと思います。岸田首相が所信表明でDFFT(自由で信頼あるデータ流通)に言及したことで、今後もっと知見の深い方々が議論をいくだろうと思うからです。

 

ブログを始めた2019年以来、安倍外交の落穂拾いを続けたすえ、門外漢でありながらデジタルや国際法規範に深入りしておりました。しかし安倍・菅政権から岸田政権に移行するにあたりDFFTも性質が変わり、それに応じて各方面からの分析も活発になることでしょう。

 

安倍外交論の灯を絶やさないために続けたいくつかの論点について今後は専門家の方々にゆだね、代わりに慣れない分野の勉強に追われた分を取り戻すため、国際情勢の情報収集活動に割く時間を確保して行こうと思います。

 

平たく言えば、一から出直しです。

 

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さて、その岸田政権下でのDFFTについての話ですが、先月末の衆議院選挙で大きな嵐が党内に吹き荒れました。選挙自体は大勝利と言っていい結果でしたが、自らを含めた当有力議員の敗北を受け、甘利明氏は幹事長職の辞任を決断してしまいました。

 

www.news-postseven.com

これを受けて甘利派閥として就任した新人閣僚に対して風当たりが強かろう……といった記事が出ています。

ただこの記事には、実際の政策という視点がありません。

 

なぜ甘利氏が彼ら若手を抜擢したか。そしてどこに配置したか。甘利氏の政策主張とどのように絡むのか。つまりデジタルと経済安全保障の接点は何であり、今回の甘利氏辞任が何を引き起こすのか。そしてその鍵となるのが、実は所信表明以降聞かれなくなったDFFTではないかと考えられるのです。

 

今回の話、恐らく私が最後に記すデジタル関連の話は

  • 所信演説で注目されたはずの岸田政権のDFFTのあやふやさ
  • 政権のDFFTを形作る甘利氏と甘利スクールの若手閣僚
  • 彼らが乗り上げた暗礁と、今年のG20での動向(以下次回)

についてとなります。

 

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1. DFFT概論

 

2019年、安倍元首相が世界経済フォーラムダボス会議)で提唱したことから始まったDFFT(Data Free Flow with Trust 自由で信頼あるデータ流通)の概論としては、

www.job-terminal.com

www.newton-consulting.co.jp

legalsearch.jp

この三つが分かりやすいでしょう。

 

ざっくり言えば自由なデータ流通(DFF)が個人・企業・国家機密侵害の危険のない、信頼されうる状態(with Trust)で行われるための国際的枠組みであり、日本にとってはSociety5.0(情報社会での高齢層などのIT利用格差を解消するものとして、大量の結合データと現実の先端技術インフラにより情報・物質世界が更に直接リンク・フィードバックされていく社会)実現のカギとなっているものです。

そしてDFFT特にFreeとTrust部分の具体化については、国家や政権によりさまざまな立場のもと多くの研究や話し合いが行われています。

※DFFTの顕在化の象徴として当時の経産省が推し進めた、WTO電子商取引交渉というもう一つの側面については一旦割愛します。

 

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安倍政権下でG20大阪サミットに並行して展開され、のち菅政権に至るまでDFFTはこちらのPDF、特に3ページの左側BOX部分の内容をいかに二国・多国間貿易協定の条文に組み込むかという側面が重視されていました。

www.mofa.go.jp

 

しかし岸田政権、特に甘利前幹事長のDFFTの定義については経済安全保障政策とDFFTのポジティブな関係性を記したこちらの文章が近いと思われます。

自国のデータ主権を拡大解釈する国家による、他国からの流入データへの規制・干渉行為を(他国側にとっての)非戦時下安全保障危機と捉え、データ規制・干渉の制限をDFFTの文脈で国際的に認めさせる事によって解決を図ろうとするものです。

しかし国家主権の解釈という観点や現状の米中関係から、データ主権に対する各国の観点を権威主義国家と自由主義国家の二元論に差し替えられやすい定義とも言えるでしょう。

www.npi.or.jp

 

あるいは異なるデータ主権を基にした運用ルールを採用する国家間での流通という考え方に着目し、国家間のTrustをどのように構築していくか、あるいは各国運用ルールの共通項を紐解くことからDFFTのルール作りを始めようとする考え方もあります。

Rebuilding Trust and Governance: Towards Data Free Flow with Trust (DFFT) | 世界経済フォーラム

Mapping commonalities in regulatory approaches to cross-border data transfers (oecd-ilibrary.org)

 

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……ここで重要なのはDFFTの定義、特に向かうべき方向性があやふやであったことです。

2019/01/23安倍元首相が世界経済フォーラムで演説した内容自体、自由なデータ流通が今後の世界成長のガソリンであり格差バスターとなること、また一方で慎重な保護のもとに置かれるべきデータの存在を示しただけです。そして他国のみならず日本政府すら、WTO改革を皮切りに本来のDFFTの流れから逸脱した国際交渉を行って来ました。

岸田政権で展開されるDFFTもやはり本来の流れと異なる、甘利明幹事長(当時)が主張する米中対立下での経済安全保障という側面が強いものになると思われました。

 

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2. 岸田首相による迷子のDFFT

 

まず岸田首相の政策方針について確認します。

kishida.gr.jp

所信表明演説とは、私が自らの政権で何を目指し、何を実現していくのか、国政についての方針や重点課題を国民の皆さまへ明らかにするものです

2021/10/08、第205回国会の所信表明演説で示された政策についてはコロナ・経済・安全保障の3つを柱とし、それぞれ付随する小方針を述べています。

 

これら所信演説の内容は、2021/09/17に行われた総裁選候補者の演説会の際に岸田首相が述べた内容とはほぼリンクしています。

news.yahoo.co.jp

 

しかしながらこの演説会とほぼ同時期、09/02~/16に発表された岸田首相の政策集とは乖離しているのです。政策説明用のスライド画面上こそリンクしていますが、その明細は全く異なることを示しているのです。

kishida.gr.jp

 

特に乖離が激しいのがDFFTの扱いでした。

kishida.gr.jp

 

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所信表明では

>世界で保護主義が強まる中、我が国は自由貿易の旗手を務めます。デジタル時代の信頼性ある自由なデータ流通、「DFFT」を実現するため、国際的なルールづくりに積極的な役割を果たしていきます

としか触れられていないDFFTですが、政策集では

権威主義的体制によるデータ独占・データ流通圏形成を阻止するため、自由で信頼あるデータ流通の枠組みを米欧と構築する DFFT(自由で公正なデータ流通)を強力に推進。経済安全保障担当大臣とあわせて専任大臣化

つまり保護貿易に傾倒する国家群ではなく、権威主義的な国家群に対抗する米欧的データ流通の枠組みを形成することであると定義した上で「経済安全保障担当大臣とあわせて専任大臣化」と明記しているのです。

地球的課題に向き合うというより権威主義自由主義の二元論に基づく経済安全保障の一環としてDFFTを構築することを目的とし、岸田首相から小林経済安全保障相に伝えたように「しっかりと横串を刺すような形で、また調整役として」機能してもらうため専任大臣とする考えだったのです。

しかし総裁選時や首相就任時の演説ではこの部分はすっぽり抜けていた訳です。

 

前任の菅前首相が総裁選時の政策発表菅義偉オフィシャルブログ)、各候補者との所見発表(産経ニュース)、首相就任後の国会所信表明演説(官邸HP)とほぼ一貫して自らの政策を主張しその発言に沿う政策を実行したのと比較して、その振れ幅は異様とも言えます。

 

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その後の衆院選に向けて作成された自民党公約・政策パンフレット、特に政策BANKではDFFTの立ち位置は更なる混沌の中にありました。

パンフレット上は『06.毅然とした日本外交の展開と国防力で日本を守る』と称した政策の中で

権威主義的体制によるデータ独占・データ流通圏形成を阻止するため、自由で信頼あるデータ流通(DFFT)の枠組みを、米欧と共に強力に推進します

と記していますが、政策パンフの内容を詳細に記したはずの政策BANKでは『04.日本列島の隅々まで活発な経済活動が行き渡る国へ』の中で地方創生や環境政策と併せて

>DFFTルールの具体化において、EUと米国を連結する中核的役割を果たし、国際デジタル秩序の形成を主導します。また、デジタル時代におけるデータの法的権利にかかる法整備を主導します

>”21世紀の石油”と言われるデータの国際的な利活用が公正かつ安心に行われるよう、イニシアチブをとって、国際社会と共にデータ活用の枠組み(国際標準)を構築します

恐らく高市政調会長-朝日新聞デジタル以下の総裁選候補者の政策まで反映させた結果なのでしょうが、EUアメリカが齟齬をきたしている(当然データルール面だけではありません)という新たな前提で、自由主義経済圏の再編成ツールという側面から記しています。

 

岸田政権におけるDFFTは、経済成長と安全保障二つの大目標に掛かる重大な政策として認識されているにもかかわらず、その実自らの居場所を探しつづける状態だったのです。

 

そもそも当初の岸田首相のDFFT観は

その程度の考えであった可能性が高く、もしかしたら現在でも経済安全保障との融合についてはそこまで執着が無いのかもしれません。

www.sankei.com

 

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3. 甘利前幹事長の二元的DFFT観と若手閣僚

 

岸田首相が今回の総裁選を機にDFFTを経済安全保障面からも言及するようになったのは、やはり甘利幹事長(当時)の働きかけが大きかったと思われます。

 

この経済安全保障、ざっくりいえば国際交流が維持されている状況下で行われる経済面での示威的行為への防衛、と捉えられます。

一般的には戦略物資や知的財産確保の面から語られることが多いのですが、データについては知的財産防衛を越えて、上記のような「どの国家を信頼して自由流通をオープンにするか」逆に言えば「データ流通をオープンにする事でどの国家に自由主義国家としての信頼を与えるか」という点で語られることがあります。

 

中でも甘利氏はかつて財界オンラインのインタビューで

>自由主義陣営側の担当者と、中国の担当者とは、明確なファイアウォールを設ける必要があるでしょう。そしてそのことを米国に分かるように示した方が良い

と語っています。知的財産防衛以前に米中対立は既定であり、民間レベルですら電子的防壁を(知的財産防衛ではなく「自国から敵とみなされないため」)必要と考えるくらい、二元論的な経済安全保障を意識しているのです。

www.zaikai.jp

 

そしてプライバシーへの抵触を躊躇しない権威主義的国家並みのスピードで個人データを流通・活用するため、データと個人の切り離し基準としてのDFFT導入を自由主義陣営内で推し進める旨『ポストコロナのデジタルガバメントとデジタルエコノミー(月刊経団連2021年2月号)』P12に記載されています。

https://www.keidanren.or.jp/journal/monthly/2021/02_zadankai.pdf

政権中枢であり岸田政権の政策的中心であった甘利氏にとって、権威主義陣営と自由主義陣営によるデータ流通面の分断は今後の既定事項だったと思われます。

その中でDFFTルールの国際展開は両陣営のデータ流通上の外壁・通用門となるだけでなく、米欧と共に築いた排他的な壁の中でこそ効果を発揮するガソリン添加剤、という認識だったのではないでしょうか。

 

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そしてこの甘利氏のもと具体的な政策を推し進めていくべく集められたのが、この経済安全保障を担う大臣に就任した小林鷹之氏以下、岸田政権に集う若手閣僚たちでした。

www.shugiin.go.jp

>データの利活用の在り方は、今後の国際秩序の在り方に大きな影響を与え得るものです。我が国がG20大阪サミットで提唱した信頼性のある自由なデータ流通、いわゆるDFFTを具体化し、産業データの利活用を含めた国際ルールの形成を主導していくことは、我が国の国益にかなう喫緊の課題と考えます

……岸田政権下で「経済安全保障担当大臣とあわせて専任大臣化」されるに相応しい、米欧と構築するDFFTと経済安全保障に対する見識と意欲を持つ人物と言えるでしょう。

 

もちろん小林鷹之氏が事務総長代理を務めたデジタル社会推進本部で事務局長・事務総長・事務局長代理の要職にあった牧島かれんデジタル相・小林史明副大臣山田太郎政務官なども座長甘利氏のもとで提言した通り

>相互の信頼性を確保することで自由なデータ流通圏を拡大するというデータ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(DFFT)の具体化を図り、国際ルール形成を日本が主導していくべき……デジタル庁創設に向けた第一次提言(2020/11/17)

という立場であるのは間違いないと考えられます。

 

更には同座長代理を務めた山際大志郎経済再生担当相も第201回国会予算委員会での安倍元総理との問答に見られるように、国際関係をやや切り込み気味に(この辺は上記「政策BANK」の主張に近い)経済安全保障面でのデータ流通を考える人物と思われます。

 

それぞれ実務経験を経た閣僚政治家らしく甘利氏のようなはっきりといた腹蔵は明かしませんが、DFFTの立ち位置がはっきりしない岸田政権下で甘利氏の思惑を少しでも現実化しようと考える様子が伺えます。

 

その手始めとして、デジタル庁の包括的データ戦略において当初(2021年6月)の「(DFFT理念を共有できる)有志国と連携しつつ、有志国以外の国への理念の浸透を図る」という一文を上書きし、

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai80/siryou2-1.pdfの8ページ目左)

10/25に「反データローカライゼーションの推進」という二元論的方針に転換、

(https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/digital/20211025_meeting_date_strategy_wg_01.pdfの7ページ目右下)

まずは国際DFFT戦略における庁内での方向性を、甘利氏の経済安全保障に準拠する形へと定め直していました。

 

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4. 内在した問題と、幹事長辞任で浮かび上がった問題

 

……ただし、ここに来て二つの問題が発生しました。

  1. ここまで強調されているDFFT、データ流通のルールを国際化するためどの省庁が動くのでしょうか。
  2. そしてDFFTについて、今後各担当官庁・閣僚が統一戦線を張ることが出来るのでしょうか。

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1. 現時点では、DFFTに関してはデジタル庁が職務を担うことになっています。この時点で策集における「専任大臣化」という前提が崩れています。

また既に2021年6月時点、平井前デジタル相下の時点であくまでDFFTへの同庁の関与は

>今後とも関係府省庁において、それぞれのリソースを、政策分野に応じて責任を持ちつつ、連携して検討・遂行する

という既存省庁の諮問に近い性格のものとしていました。デジタル庁が今までの関係を逆転して各省庁を「しっかりと横串を刺して」活用し、自ら国際積極的に国際論壇の俎上に乗せようとするのでしょうか。

 

一方で「横串を刺す」べく創設された経済安全保障担当相も就任記者会見の8番目の質疑で述べた通り

>私自身が国際会議にどうやって関与していくかというところは、まず、今回新設されたポストということもありまして、岸田総理からは、しっかりと横串を刺すような形で、また調整役としてしっかりと頑張って推進してほしいということを言われていますけれども、これはまず、海外にどうこうというよりも、まず国内の政府内部で、これはかなりオーバーラップしてくるので、連携を強化するという以外に多分ないと思うんですけれども、そこをもう少ししっかりと精査をした上でないと、今のご質問には、ちょっと今の時点ではなかなか答えにくいかなと思っております

と海外交渉に及び腰である一方、続く対中交渉の質疑では

>経済安保という観点からすると、先ほど申し上げた技術の流出保全とか、そういう点からすると、やはり、じゃ、もう全く自由にどうぞというわけではなくて、やっぱり国益の観点から一定のルールづくりというのは必要なのかなと認識しています

と……悪い言い方をすればDFFTに口出しはするけど、自ら外交の矢面に立つことを躊躇している旨の発言をしています。

 

さらに言えば再任時にはDFFTについて

>デジタル分野での新たなルール作りに、まさしくリーダーシップを発揮してきた

と語る茂木外相(当時)も

>関係省庁が連携をしながら、必要な法整備など、経済安全保障の確保に向けた、政府全体としての必要な取組、着実に進めていくことが重要でありまして、外務省としても、こういった分野におきましては、経済安全保障担当大臣とも連携をしながら、政府一丸となった取組に、積極的に貢献していきたい

他省庁による横串とその前提となる岸田首相の姿勢があって初めて連携をとる。

DFFTと甘利的経済安全保障の一体化には一歩引いた態度であることを示唆しています。

 

……岸田首相やデジタル庁まで含めて、結局のところ米中対立に踏み込む国際交渉へと臨むのは誰もが及び腰の様子なのです。

 

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そして冒頭述べた甘利幹事長の辞任が、1.だけでなく2. の問題まで一気に浮かび上がらせました。

www.sankei.com

後任外相の声が上がった林氏の経済安全保障思想は未知数ですが| 新政界往来、少なくとも新任幹事長の茂木氏は安倍政権末期から各国とのDFFT交渉に実際に携わった人物です。

二元論的安全保障面にはそれなりに理解があるでしょうが、現在交渉中のDFFT外交に自ら余計な色を付けることに対して積極的でないことは外相時代の発言の通りです。

そして林新外相が茂木外交を引き継ぐかは分かりませんが、少なくとも甘利氏の後ろ盾のない横串をそのまま受け入れてDFFT外交を紛糾させるとは思えません。

 

甘利氏の経済安全保障を内包させるにせよ後退させるにせよ、核となる甘利氏が抜けた状態で生え抜きのデジタル閣僚と他閣僚が足並みを揃えてDFFTを再編成し、ゴリゴリの国際展開まで持ち込めるかは更に難しくなったのではないでしょうか。

 

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おわりに:G20イタリアでのDFFTの変化

 

さて、蛇足ではありますが……実は私はDFFTを二元論的対立から展開すべきではないと考えています。

それなのになぜ自分が今頃DFFT思想の閣内統一と国際展開の難しさを指摘しているのかというと、実は日本が主導しているはずだったDFFTが2021年イタリア主催のG20サミットを機に変質しているからです。

閣内でゴタゴタしたり海外交渉を戸惑って主導権を失っている暇は無かったのです。

 

しかしこの重要な場に岸田首相はリモート参加を選択しました。その結果G20で日本が築いた数少ないイニシアティブであったDFFTは、安倍・菅時代のものでも甘利カラーのものでもない「よりインクルーシブなものに」封殺される危機にあります。

www.mofa.go.jp

 

……次の文章に続きます。

 

 

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スーダンクーデターおまけ2:インフレを背景に挙げなかった理由

……いい加減スーダンの話は切り上げるつもりだったのですが、表題の件について少々。

 

今回のクーデターに関する背景として、以前の文章ではスーダン東部の動向イスラム法の否定などについては提示しましたが、他の記事やブログが掲載したようなインフレによる政情不安は背景に入れておりませんでした。これには理由があります。

 

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1. インフレ状態にあるのは確かでしょうが……

……一応スーダンのインフレ率についてはこちらの5ヶ年データが分かりやすいでしょう。

jp.tradingeconomics.com

食料品等の高騰を引き金に前バシル政権が崩壊した2019年よりも、2020年以降の方が極端なインフレに突入していることが分かります。これは通貨の問題もあるでしょうし、慢性化した原油不足| Radio Dabanga、更にはIMFによるスーダン政府への緊縮財政指導から生まれた補助金削減政策も関わっているようです。

www.africanews.com

 

当然ながら食料品についても高騰しており、国連世界食糧計画が定める一日分の食料(LFG)調達価格も下記1ページ目のグラフを見れば1年で3倍程度跳ね上がっている(2021/2020 8月比較)のが分かると思います。

https://docs.wfp.org/api/documents/WFP-0000131933/download/

……まあ労働賃金(Casual Labour Daily Wage)も跳ね上がっているのですが、失業率なども併せて考えなければ国民の実際の懐具合は分かりません。

 

まあ数字としてはスーダンの治安上の背景にはなるのでしょうか。

 

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2. 政治の中枢機関によるクーデターの背景にはならんでしょ?

しかしこれは理屈の問題なのですが、物価高騰による治安上の問題があったとして、それをそのまま今回のクーデターの背景に組み込んではいけないだろう、と考えられるのです。

 

前回のクーデターについては

www.nhk.or.jp

>去年(注・2018年)12月、補助金のカットで、パンの値段が3倍に跳ね上がって、人々の怒りが爆発し、バシール大統領の辞任を求める大規模な抗議デモが3か月以上続きました。そして、先週木曜日、国防相など軍の幹部らが、バシール大統領の身柄を拘束し、今後2年間、暫定的に統治すると宣言した

  • 補助金カットによる食料高騰が大規模な辞任要求デモを引き起こし
  • そのデモに便乗する形で当時の国防相がクーデターを敢行、
  • 最終的に国防相が後任とした軍側ブルハン議長とハムドク首相らの暫定連立政権が樹立

という流れがあります。実際にクーデターを起こしたのが当時の国防相であったとしても、最初に政府に対する国民の辞任要求デモ-AFPBB Newsがあるからこそデモの引き金である物価高騰が背景となりえた訳です。

 

しかし今回はそうではなく、既に権力の中枢にあるブルハン氏らによるほぼ単独のクーデターです。

ブルハン氏らがハムドク政権に対してインフレ政策を非難する人物とみなされたり、また便乗し得るような現首脳陣の辞任まで求める大規模デモを国民が引き起こした、などという報道は見当たらないのです。

そしてそれは前述の石油不足、あるいは燃料補助金の廃止が引き起こしたデモや便乗した犯罪-AlTaghyeerにおいても同様です。矛先が現政権に向かってすらいないのです。

 

この状況で「インフレがクーデターの背景」だと、私には記すことは出来ませんでした。

 

……まあネットでざっと調べた限りですから、現地のジャーナリスト達を論駁出来るほどの根拠はありませんけどね。

スーダンクーデターおまけ:ポート・スーダン閉鎖勢力

2021/10/27追加・修正

見出し及びポート・スーダンに関する基礎情報を中心に、文章を追加しました。

 

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はじめに

前回の文章で、AL-MONITOR紙やAL-JAGEERAの記事を引用して

東部地方政権による軍民共同政権への反感がスーダン東部の主要港閉鎖と国内全体の物資欠乏を引き起こしている

とあっさり記したのですが、文章作成後この件について続報を見つけてしまいました。

 

news.trust.org

"Sudan's Beja tribes plan to end shutdowns which have curtailed the fuel supply of the country, Al-Hadath TV channel reported on Monday"

>スーダンのベジャ族は、国の燃料供給を抑制したシャットダウンを終了する計画であると、アル・ハダーステレビチャンネルが月曜日に報告しました

……ブルハン氏率いるクーデター軍に反対する立場の者が多い中、スーダン東部の主要港ポート・スーダンを閉鎖し軍民並立政権に抗議していたBeja族が、早々にクーデター軍に賛同する姿勢を示していたのです。

 

という事で、このベジャ(ベジャ・ナジール)について少々。

 

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1. ベジャ・ナジールとポート・スーダン港閉鎖

ポート・スーダン港は下の時事通信の画像でも分かるように、紅海に面するスーダンの海洋物流の殆どを担う重要港になるだけでなく、2011年にスーダンから独立した内陸国南スーダンの石油輸出の窓口ともなっています。

スーダン領油田の8割以上を占めた南スーダンはこの港から他国に原油を輸出し、スーダンは港湾使用料を得る形で、貧しい両国にとってポート・スーダンは経済の生命線に当ります。

 

スーダン東部のベジャ・ナジールはこのポート・スーダン及び近隣の港を封鎖することでハムドク政権に経済的ダメージを与え、また軍部ブルハン側のクーデターに利する形で封鎖を解除した訳です。

 

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2021/09/21、時事通信等で

www.jiji.com

>ポートスーダンが、昨年10月の和平合意に抗議するデモ隊によって封鎖

>スーダン現政権は、西部や南部の反政府勢力と和平合意を締結した。しかし、ポートスーダンがある東部に暮らすベジャ人を無視していると批判が高まっていた

 

とあっさり伝えられていた話ですが、この話を紐解くと

www.dabangasudan.org

’The High Council of Beja Nazirs has organised civil disobedience actions by blocking key highways linking Red Sea state with Kassala and El Gedaref, suspending bank transfers, and closing several ports and duty-free markets.

Their most prominent demands are to cancel the Eastern Sudan Track of the 2020 Juba Peace Agreement and the adoption of a new negotiating platform for eastern Sudan. The high council also demands the formation of a government of technocrats. “We demand a competent government as the current partisan government is too slow in responding to our demands,” Beja Nazirs Council spokesman Abdallah Obshar told Radio Dabanga.

Beja nazirs have opposed the Eastern Sudan Track since it was agreed upon by the Sudanese government and the Sudan Revolutionary Front rebel alliance in Juba in February 2020.

Some eastern Sudanese community leaders and activists disagree with the Beja nazirs’ approach.’

>ベジャ・ナジール高等評議会は紅海とカッサラとエル・ゲダレフを結ぶ主要幹線道路を封鎖、銀行振込を停止し、いくつかの港湾と免税市場を閉鎖することで市民の不服従行動を組織した。

>彼らの最も顕著な要求は2020年のジュバ和平合意の東スーダントラックをキャンセルし、スーダン東部のための新しい交渉プラットフォームを採用することです。高等評議会はまたテクノクラートの政府の形成を要求します。「我々は、現在の党派政府が我々の要求に応じるのが遅すぎるので、有能な政府を要求する」とベジャ・ナジーズ評議会のスポークスマン、アブダラ・オブシャーはラジオ・ダバンガに語った。

>ベジャ・ナジールは、2020年2月にジュバでスーダン政府とスーダン革命戦線の反乱同盟によって合意されて以来、東スーダン・トラックに反対してきた。

スーダン東部のコミュニティリーダーや活動家の中には、ベジャ・ナジールのアプローチに反対する人もいます

 

……2020年2月東スーダン側から野党勢力が出席する形で締結された和平合意に対し、付随議定書を含めた撤廃をスーダン東部多数党派ベジャ・ナジール評議会が求めた事が発端であり、抗議の一環として今年9月より行ったのがポート・スーダン港の遮断だったとのことです。

更にベジャ・ナジールはこの交渉時点で当時の政府(軍側ではなくハムドク政権側)への反感を示し、寧ろブルハン氏率いる軍寄りの態度を示していたようです。

 

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※なお同紙は別の記事にて付随議定書「東スーダントラックプロトコル」について

東スーダントラックはアバブダ族の指導者オサマ・サイド、野党のベジャ議会の議長、ベニー・アメルの指導者ハリド・シャウィーシュ、正義のための人気戦線の代表によって交渉、署名されました。ベジャ・ナジール高等評議会と独立首長国は協議に関与していません。これまでのところ彼らは特に反対しているものを明らかにしていません。彼らは東スーダン・トラック全体の中止を要求し、地域の将来を決定するために包括的な東スーダン会議を求めてます

と注釈を加えています。

ちなみにこの記事の冒頭の画像はベジャ・ナジールの封鎖行動ではなく、ベジャ・ナジールに対する反対運動の画像だそうです。ベジャ・ナジールによるパイプライン等の封鎖は数十人規模の集団で行われていたとの記事もあります。誤解なきよう。

 

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なおこのベジャ・ナジールの動きについては当時からスーダン政府側も警戒しており、

www.dabangasudan.org

'Prime Minister Abdallah Hamdok said that "what happened is an orchestrated coup by factions inside and outside the armed forces and this is an extension of the attempts by remnants since the fall of the former regime to abort the civilian democratic transition". 

He further said that the attempted coup was "preceded by extensive preparations represented by lawlessness in the cities and the exploitation of the situation in the east of the country, attempts to close national roads and ports and block oil production".'

>アブダラ・ハムドク首相によると「起こったのは軍隊内外の派閥による組織的クーデターであり、これは民間の民主的移行を中止する旧政権の崩壊以来の残党の試みの延長である」

>彼はさらにクーデターの試みについて「都市の無法や国の東部の状況の搾取、国道や港湾の閉鎖、石油生産をブロックしようとする試みに代表される広範な準備がすでに行われている」と述べた。

2021年9月の旧政権シンパのクーデターへの関与を怪しむ発言もされていました。

またスーダン貿易省によると隣国との陸上交易により……コストは嵩むもののポート・スーダンの代替手段を構築し、港湾を占拠する勢力に対抗する話も出ていたようです。

 

……とはいえ、ポート・スーダンを閉鎖しスーダン政府に圧力を加えたベジャ・ナジールが、実際にクーデターに関与していたかは分かりません。

そもそも2006年の東スーダン和平合意(Eastern Sudan Peace Agreement)まで、前オマル・バシル政権にも対抗していた訳ですし……

 

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2. 中露とポート・スーダンの関係記事抜粋

分からないついでに、軍事クーデターで顔を出すあの国とポート・スーダンの関係を調べると……やはり。

 

www.nikkei.com

>同国政府は11日、アフリカ北東部に位置するスーダンとの間で、紅海に面した同国の港にロシア海軍の補給拠点を設ける協定を結ぶ方針を明らかにした

 

www.russia-briefing.com

”North African base will provide military support for BRI shipping along the Red Sea to the Indian Ocean ”

”China is a major client state of Sudan, purchasing about US$1.8 billion of mainly energy products from Sudan, and exporting about US$740 million of mainly consumer goods back to the country. Russia is the second largest client states after China, purchasing some US$1.6 billion of oil related products from the country”

>北アフリカの基地は、インド洋への紅海に沿って一帯一路のための軍事支援を提供します

>中国はスーダンの主要な顧客国家であり、主にエネルギー製品の約18億米ドルをスーダンから購入し、主に消費財の約7億4000万米ドルを同国に輸出している。ロシアは中国に次いで2番目に大きな顧客国であり、同国から約16億米ドルの石油関連製品を購入している

 

www.aninews.in

"But now, Sudan's Prime Minister called out the dubious role of Chinese entities in the oil sector by seeking a review of all agreements signed with China in the past"

>しかし今、スーダンの首相は過去に中国と締結したすべての協定の見直しを求めることにより、石油部門における中国の実体の疑わしい役割を呼びかけました

 

……いや勿論、スーダン政権に圧力を加えたポート・スーダン占拠勢力の背後にあの国が居るなんて証拠はありませんし、今夏あたりを起点に中露に対するスーダン・ハムドク政権の視点が中露依存から疑問視に向いていた、という考え方もあくまで推論でしかありませんが。

 

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3. ダルフール……はあまり関係ないでしょうね。

最後に、いくつかのブログを漁っていた際に出てきたのが「スーダンと言えばダルフール」という一節だったので、この部分も少々。

 

確かにバジャの勢力は伝統的に他の地方勢力と結びつき、時の政権に圧力を加えようとする性向はあるようですが、

sudantribune.com

ダルフール地方については

www.dabangasudan.org

‘El Burhan once said that he is the Lord of the people of Darfur and authorised to kill them when, as, and how he wants ’ – displaced leader Sheikh Matar Younis

'エル・ブルハンはかつて、彼がダルフールの人々の主であると言い、彼が望むとき、そしてどのように彼らを殺す権限を与えました' - 避難民の指導者シェイク・マタール・ユーニス

暫定連立政権樹立に際し、ブルハン氏こそかつての虐殺指導者であると訴えた経緯があります。たとえ最近に至り政権自体への歩み寄りは示したとはいえ軍によるクーデターを支持する可能性は少ないと思われます。

備忘録:スーダンクーデター(2021/10/25)

mainichi.jp

 

以前に2019年のスーダンクーデターについて備忘録の形で文章を記しましたが、当時締結された選挙・民政移管過渡期として存在した軍民共同政権が崩れた形となります。

ちなみに現時点では合意内容にある2023年7月の選挙実施については覆さない旨発言しています。

 

※この暫定合意による初代主権評議会議長が、2019年クーデター首謀者Awad Mohamed Ahmed Ibn Auf元国防相から暫定軍事評議会議長を引き継いだ、今回のクーデター首謀者Lt. Gen. Abdel Fattah al-Burhan氏になります。

なお議長を退いたのちのAhmed Ibn Auf氏の消息は不明です。

 

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2019年クーデターから現在までのスーダンの概況については、アルジャジーラが記事にしています。

www.aljazeera.com

 

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現状日本ではクーデター自体の背景について2021/09/21のバシル前首相シンパによるクーデター未遂事件のみクローズアップされていますが、近況については

www.al-monitor.com

こちらの記事が詳しいかと思います。上記時事通信記事にあった前政権シンパのクーデター未遂の後

これらの状況下で Abdalla Hamdok首相とLt. Gen. Abdel Fattah al-Burhan主権評議会議長が2021/10/11に会談を行うものの、会談後ブルハン議長は現政府の解散と軍の政治介入拡大以外に現状を回避する術がない、と公言していた旨記しています。

 

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2021/10/27追加

上記「東部地方政権による反感」について、別途おまけの文章を作成いたしました。

tenttytt.hatenablog.com

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なおハムドク首相の政策上の特徴については殆ど分かりませんでしたが、宗教の自由と前バシル政権下で推進されたイスラム法の排除について主に言及されています。ただし、特にイスラム勢力の反対と今回のクーデターを結び付ける文脈の記事は今のところ見受けられません。

www.christianitytoday.com

 

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……ここしばらくサイバーやら法律ばかりに目を向けていて、国際情勢全般について全く疎くなってしまいました。もう少し外交全体に目を向けていれば、今回のクーデターについても何らかの感想を記すことが出来たのでしょうが。

 

来年の夏にはアフリカ開発会議(TICAD8)も始まります。日本外交を見る上でも、そろそろ視野を戻さなければいけないと反省しきりです。

 

小ネタ:岸田内閣で目についた、元外務副大臣とイタリアの話(2021/10/05追加あり)

www.sankei.com

 

明日2021/10/04、岸田新内閣が発足するという事です。まあいつもの事ながら目新しい話には興味が無いですし、閣僚それぞれの履歴がそのまま今後の政策にかみ合うかは分かりませんので。

 

ただ、一人だけ目についたのが

>万博相に若宮健嗣元防衛副大臣

との事で。第四次安倍再改造内閣では外務副大臣だった当時の2019/12/07、

www.mofa.go.jp

イタリア・ディマイオ外相への表敬を行っていた方ですね。

 

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今までも記事に取り上げましたが、2019年9月第二次コンテ政権で外相就任したディマイオ外相と同時期第4次安倍再改造内閣で外相に就任した茂木外相の間では、行き違いと論じるには余りに露骨なくらい会談が避けられ続けて来ました。

外務省HPの過去の外交日程にすら記載されない2020/03/18のG7首脳テレビ会談に付随する電話会談を除いて、実際に両外相が会談を行ったのは今年2021年5月のG7外相会談となっています。

G20サミットの2019年主催国と2021年主催国の外相にここまで交流がないというのは、2020年リヤドサミットがテレビ会合だったとはいえ現行のトロイカ(前回議長国・次回議長国との3国による協力)体制下では異常なことです。

 

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で、このような微妙な関係となる初期に若宮氏が表敬を行いました。当然翌週の茂木外相との会談についても触れられたと思われます。

www.mofa.go.jp

翌週にマドリードで行われるASEMで初の外相会談が行われる予定であった旨、当時のADNKronos紙が”Di Maio to meet Japanese counterpart at ASEM”(2019/12/13)という表題のもと記していた……のですが、ディマイオ外相は予定をブッチし急遽リビアに行ってしまいました。

www.ansa.it

もっとも当時のANDKronos記事も、イタリア外務省のプレスリリースも削除されています。魚拓採ってれば良かったなあ……

 

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まあそんな過去の話があったのですが、若宮氏が就任間もないディマイオ外相と会った数少ない日本の要人であることは確かでして。

 

そしておそらく岸田新首相の国際的お披露目が、今年イタリアが主催するG20ローマサミットになるという事で。

jp.reuters.com

 

まあちょっとした偶然の話です。

 

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なおこの件絡みの話を、以前下記の記事辺りに記しています。

tenttytt.hatenablog.com

tenttytt.hatenablog.com

当時はイタリアで何か面白いことが起きるかなぁ……などと期待していたのですが、その後政権が更に変更し右翼政党まで含む挙国一致体制になった程度でしたね。

 

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2021/10/05追加

 

……と思っていたら、昨日急遽「G20でのローマ入りを中止する」旨一報が入りました。

当初は共同通信ソース一本だったのですが、その後の岸田首相の内閣発足後記者会見に際し「この現状において、これはリモート等の技術によって発言をする、参加することも可能であると認識しておりますので、できるだけそうした技術を使うことによって、日本の発言、存在力、しっかり示していきたいと考えています」- 産経ニュースと述べた旨、産経新聞などでも続報が入っています。

 

具体的な理由は示しませんでしたが、総選挙を当初の予定から更に10/31開票まで前倒しする- 産経ニュース都合もあったのでしょう。

またG20サミットへの手土産が用意できなかったとか、自らの国際的お披露目を行う必要を感じないという理由からかも知れませんし……あるいは未だに日伊外相間に溝があるのかも分かりません。

 

……まあ岸田首相の判断に是非を問うつもりは無いのですが、理由は知りたいところですね。間違った前提で記事作っちゃったし。