小ネタ:チェコ政権交代と台湾の小話

DFFTの話は一旦お休み……で、

 

www.jiji.com

>バビシュ首相に対抗する野党5党が8日、連立政権の樹立で合意した。これにより、政権交代がほぼ確実になった

 

2021/10チェコ下院選挙で野党5党が過半数議席を獲得、各党政策の調整の末2021/11/08に連立政権樹立に成功。

4年間続いたバビシュ政権から、野党のうちキリスト教中道右派市民社会党(ODS)党首、フィアラ(Petr Fiala)氏率いる政権へと移行するとの事。

 

ビジネスマンとしての側面を持つバビシュ氏については自身が経営する持株会社に関するEU補助金不正疑惑-AFPBB Newsや、特に選挙直前でのタックスヘイブンを利用した蓄財に関する報道-Bloombergがネックとなり、選挙の敗北に繋がったそうです。

 

一般には環境政策-時事ドットコム移民政策-AFPBB NewsでのEUとの軋轢で知られた人物ですが、この点についてはそこまでチェコ国民の争点となった旨の報道は見られません。というか連立政権首班のODS自体、EUの政策に対しては懐疑的なスタンスをとっていたとされています。

 

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この政権交代に関しては、台湾がひとつのキーワードとなっています。

news.tv-asahi.co.jp

 

2021/10、台湾外交部長がチェコ及びスロバキアへと外遊を行いましたが、その際に対応した(画像左側の)人物のことを覚えているでしょうか。

急死した前任上院議長の意志を引き継ぎ、2020/08に訪台したチェコ上院議長ビストルチル(Miloš Vystrčil)氏です。

wedge.ismedia.jp

 

当時は「チェコが中国依存から脱却したか?」と騒がれましたが、中国に傾倒する-Prague Postゼーマン大統領などチェコ政権中枢からビストルチル氏の行動を非難したり、その後も国家として対中姿勢を明らかにしなかったり……と私を含めた当時のネット界隈も混乱したものです。

 

まあ何という事もない。ビストルチル氏は連立政権首班ODSの副議長のひとりでした。

当時のバビシュ政権や、バビシュ氏の後ろ盾となった(というよりEU以外の西側諸国とも友好を保ったバビシュ氏以上に親中的であった)ゼーマン大統領とは、対中政策を含めて対立する立場であった訳です。

 

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……さて、今後のチェコ政権について一般的に懸念されるのは、恐らく連立5党の政策の相違でしょう。

バビシュ政権と同じEU懐疑派のキリスト教中道右派とされる首班ODSと他の4党、特に左派的な環境政党とされる海賊党(Piratska Strana)ではその政策……特に対EU政策・財政・文化的政策に差があり、最終的に分裂に繋がりかねないと言われています。

 

しかし、下院選挙に向けて作成された両党の政策プログラムを確認すると

www.spolu21.cz↑SPOLU(首班ODSなど3党が加盟する中道右派同盟)ホームページ

www.piratiastarostove.cz海賊党ホームページ

 

EU加盟に代わるものはない(SPOLU)

 

>我々の外交政策の方向性はEUおよびNATOにおけるユーロ大西洋地域におけるチェコ共和国のアンカーに基づいている(海賊党

 

>議会の任期の終わりまでに赤字をGDPの1.5%に減らす(中略)健全な財政のために、我々は財政マーストリヒト基準(訳注3%?)と財政協定(訳注1.5%?)の両方をできるだけ早く満たすことにコミットしている(SPOLU)

 

チェコ共和国マーストリヒト基準を満たすために、2025年までに国家財政赤字GDPの3%以下に減らす(海賊党

 

私たちは原子力エネルギーと分散型再生可能エネルギー、特に屋上太陽光発電、蓄電エネルギーの組み合わせで私たちの未来を見ています(中略)我々はロシアや中国の企業によって建設されないことを条件に、ドゥコバニーでの新しい原子力設備の建設を支持する(SPOLU)

 

現在の原子力発電所の利用を分析し技術、経済、安全の条件を明確にしながら、さらなる開発を進めます。徹底した分析を踏まえ、原子力発電所開発の経済的・安全上のメリットを検討する。いずれにせよ、ロシアや中国などの権威主義体制はこのプロセスに参加しません(海賊党

 

EUはより効果的に対外国境を守らなければならない。ヨーロッパレベルでは、拒絶された亡命希望者のプロセスをスピードアップし、人々の密輸業者と戦い、脆弱な地域で体系的に支援する必要があります。同時に、各EU諸国が独自の移民政策と亡命希望者へのアクセスを自由に選択することを主張する。
>強制クォータを拒否し、EUの国境外の移民に対する解決策を促進する。
移民がヨーロッパへの不確実な行進を行うのを防ぐための最も効果的な方法である彼らのためのまともな条件を確保するため、競合国の近くの難民キャンプのための援助の増加を推し進めます。

労働市場のニーズに応える透明なブルーカードシステムをサポートします(SPOLU)

 

>移民に対するアプローチでは、いわゆるクォータの再配布を義務付けずに、責任ある安全で人道的なソリューションを推進しています。連帯は自発的であると考えられている。
>移民の源泉である国や移民ルートを通じたEUの協力を支援する。EU外への不法移民を防ぎたいと考えています。我々は、亡命申請のための事前審査及び国境手続きの導入を含む、EUの対外国境の保護の強化を支持する。

>FRONTEXの改革を含む、亡命政策と帰還政策に関するEU諸国間の協力を支持する。
>スポンサー・リターンの方針を支持します。
>個人データの保護に重点を置いて、EU内での情報共有を強化します(海賊党

 

……注:海賊党プログラムでは引用した対EU向け政策のほか、滞在移民への国内環境改善政策も含まれていますが、SPOLUではその点が省かれています。これはSPOLU自体が移民に対して寛容なEU政策を嫌い、まずEUに対して移民対策を要請している前提であるためと思われます。

 

……と、一般的な政党観では対EU・財政・環境・移民政策あるいは対中露政策など対立すると思われた政策内容が、実は多岐にわたり類似したものであるのが確認できます。

まるで下院選挙以前から、何らかのすり合わせが行われていたように互いの政策の妥協点に達しているようです。

 

特に海賊党については、2021年5月の取材で党首がかつて対EU・移民政策について急進左派的な意見を持っていたことを「若々しい反乱」と称し、現在では考え方を融和的なものに改めた旨発言しています。

cnn.iprima.cz

 

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細かい違いとしては上記の国内向け移民政策のほか、

  • SPOLUが欧州諸国の他、関係の深いイスラエル・ヴィシェグラード4か国で交流を持つ日本及び韓国・台湾を将来のパートナーと名指ししているのに対し、海賊党の言及は台湾のみ
  • 麻薬について海賊党が「薬物に関する国連条約を含む時代遅れの慣習の更新を支持」しているのに対し、SPOLUは現状対応無し(薬物依存に対する言及程度)

といった所でしょうか。

 

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……こなれない記事ですみません。

海外全般情報整理のリハビリ中という事で、優しい目で見て頂ければ幸いです。