『TICADとAUと』https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/02/14/212826の続きとなります。
一連の目次は下記URLまでお願い致します
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/03/28/203214
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3.直近以前のTICAD…2016年TICAD6ナイロビ宣言
前回は、TICAD(アフリカ開発会議)と、AUの経緯について触れましたが、今回はこの状況を踏まえた直近のTICAD……の前に、河野外相就任前のTICADの立ち位置について触れてみたいと思います。
TICAD6(2016年)で行われた「ナイロビ宣言」による安倍首相の演説では、TICAD6の中心議題は以下の通りとなっています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/af/af1/page3_001784.html#section3
※経済の多角化、産業化
…農業・畜産・鉱業・海洋、中小含む
アフリカIT、観光支援。エネルギー
都市問題へ の言及。バリュチェーン
構築と付加価値向上
・質の高いインフラ
・民間セクター開発
…雇用に向けた貿易投資促進、
民間セクターの役割強化
アフリカ内企業へインセンティブ
・人材育成(教育・技術・職業訓練全般)
※保健システムの強化
・公衆衛生上の危機への対応
…WHO、世銀の資金調達メカニズム
・UHC(ユニバーサルヘルス・カバレッジ)
…国際的支援に支えられた国単位の
「どのような人も保健サービスを
受けられる包括的仕組み」を作る
重要性を強調
◎UHC推進は伊勢志摩サミット以来
安部外交における一つの柱です。
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.kantei.go.jp/jp/97_abe/statement/2015/1216speech.html&ved=2ahUKEwiE5M6greHgAhVXF4gKHZZdD_kQFjAIegQIChAB&usg=AOvVaw39Lk9-TxQwDjzFi1_Ajv4-&cshid=1551457606644
※社会安定化及び平和構築
…教育・訓練・雇用面での社会安定化
・テロ及び暴力的過激主義への対応
…テロ対策のため国際協調を呼びかけ
・地球規模の問題及び課題
…環境・貧困等への対処と協定締結促進
・海洋安全保障
…国際法に基づく海洋秩序
※21世紀における国連
…安保理改革への決意を改めて強調
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比較のために、FOCAC(中国アフリカ協力フォーラム)2018での習主席の冒頭指針演説をまとめると、
以下の通り。
※産業振興イニシアティブ
・食料支援、農業指導者派遣
・アフリカにある中国企業への支援
・アフリカ企業開発への融資
※インフラ接続イニシアティブ
・物流、情報、電気通信、水インフラに
関わる中国企業への援助
・中国アフリカ航空便の拡充
・中国におけるアフリカ債の発行促進
※貿易円滑化イニシアティブ
・非資源製品中心に輸入増大
・合計50の貿易円滑化プログラム実施
・電子商取引の推進
・AfCFTA(アフリカ自由貿易圏)を支持、
AfCFTAを通じ国・地域とのFTA交渉
◎AfCFTAについて改めて触れますが
中国があくまで自国のFTAツールと
捉えている事に注目して下さい。
※グリーン開発イニシアティブ(環境)
※能力開発イニシアティブ(職業技術)
※ヘルスケアイニシアティブ
・疾病管理予防センターや友好病院等
主力プロジェクトアップグレード
50の医療・健康援助プログラム
・公衆衛生情報の組織化
・伝染病予防への支援
・医療専門家派遣
◎エチオピアは中国企業の支援により
初の民間病院を、またタンザニアは
中国資本によりアフリカ最大の
医療機器工場をそれぞれ2017年に
建設しております。
※人的交流イニシアティブ
・文明史研究機関、メディアセンター
文化センター設立、交流イベント等
・孔子学院設立
・中国観光業者のアフリカツアー振興
◎中国の観光政策についてはADS
(中国人観光の承認目的地ステータス)
により承認国の観光業に中国政府が
直接圧力を与える問題があります。
https://www.ide.go.jp/Japanese/Data/Africa_file/Manualreport/cia14.html
『アフリカにおける中国—戦略的な概観 (China in Africa)14.付属文書 2:中国=アフリカ協力フォーラム・経済開発』
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.theguardian.com/global-development/2018/sep/08/palau-against-china-the-tiny-island-defying-the-worlds-biggest-country&ved=2ahUKEwjwsLP2r-LgAhXNBKYKHfEtC8MQFjAAegQIAhAB&usg=AOvVaw2GN6Y6S1yVCGEtVcUUD2u6&cshid=1551492546254
『中国に立ち向かうパラオ!:巨人に立ち上がる小さな島』ガーディアン紙2018/09/08
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※2019/03/05修正
上記のガーディアン紙記事については、ADSによる直接的影響が薄い点から、引用例から削除いたします。詳細は下記をご覧ください。
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/03/05/233528?_ga=2.249072452.296139328.1550833429-2060743813.1489325303
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※平和・安全保障イニシアティブ
・平和と安全基金設立
・サヘル地域、アデン・ギニア湾の安全
保障を通じたAUへの軍事援助
◎アフリカに対する軍事援助について
「ウイグル系テロのアフリカ流入」
に対し、AU加盟国への共闘と支援を
唱えています。
https://www.ide.go.jp/Japanese/Data/Africa_file/Manualreport/cia14.html
『アフリカにおける中国—戦略的な概観 (China in Africa)14.付属文書 2:中国=アフリカ協力フォーラム
・安全保障の発展』
……これらの指針演説から見られるTICAD6の特徴ですが、
- アフリカ開発と自国のwin=winを大目標として、観光や軍事援助まで含めた、一つ一つ具体的な直接支援を行う中国と異なり、アフリカのオーナーシップという大目標の下に幾つかの中目標を設定、中目標に沿った個々の小目標を支援するスタイル。
- 中目標については日本自身の支援よりも、国際協力を日本が提唱する形が多い。小目標もアフリカの自助努力を前提とし、日本側は協力や促進提唱へと回る。
- あくまでアフリカ国内の雇用・産業育成を名目とし、「日本企業へのインセンティブ」という発言すら回避
- 民間セクター開発に言及しているが、日本からの企業進出に対する具体的な支援母体が見えてこない。FOCACの付属機関としてCABC(中国アフリカビジネス会議)を設置、民間企業を大量動員出来る中国のような強力な官民連携のリーダーシップが存在しない。
以上の特徴が見られると思います。
平たく言えば、パートナーシップ(国際的協調まで含めた協力)のためのフレームワークは旨く出来ていますが、日本が独力でアフリカ全体を支援する事が困難となっている事。
また露骨な我田引水が困難な分、官民が連携してアフリカ進出に対応する利益確保が難しいことも表しています。
この辺りは、2010年代当時の中国の勢いに対して、何とか対抗しようという姿勢を感じます。
……さて、実はTICAD6演説のもう一つの特徴として
「AUとの連携が見えてこない」事があります。
また、今回は深く触れませんが、AU(アフリカ連合)が2015年に採択したロードマップ『アジェンダ2063』と、『ナイロビ宣言』では目指すものがズレている、という疑問点もあります。
実際のところ、この辺の理由が今の自分には理解出来ません。
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この理由について、自分なりの試論を立ててみました
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/04/08/212649
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ただし、直近のTICAD6閣僚会議(2018/10/06)では、このAUへの対応という面が変化していきますので、次回はそこを追ってみたいと思います。
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次回、『TICADとAUと(3)』に続きます。
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/03/03/125302
なお、他国のアフリカ政策及びフォーラムの特徴については、こちらに補項を作りました。
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/03/03/004216?_ga=2.227797854.296139328.1550833429-2060743813.1489325303