TICADとAUと:補項…各国の対アフリカ政策とフォーラム

TICADAUと(2)』https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/03/03/004405補項として、先進諸国その他の対アフリカ政策とフォーラムについてまとめたものです。『TICADAUと』の内容と重複したり、逆にズレが発生しているかもしれません。

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先進国及び中国等の対アフリカ政策の特徴について
https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07001243/africa_strategy.pdf
『主要国の対アフリカ戦略』ジェトロ2013/03
こちらが詳しいので、興味があればこちらを。

アメリ

AGOA(アフリカ成長機会法:一定基準を満たす国の特定品について、アメリカ輸出を免税することで、対象国の貿易産業を振興させるのが目的)や安全保障を通じて、アフリカ各国それぞれとアメリカとで為される二国間協定が基本。
なお、元々アメリカのアフリカ政策は優先順位が低く、また政権交代により一貫性に欠ける傾向があります。
https://agoa.info/news/article/15565-trump-s-africa-surprise.html

EU

地理的・歴史的側面から、北アフリカには諸国のEU化、中南アフリカにはEU⇔地域共同体単位での自由貿易、あるいは経済協力協定が政策の中心。
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2019/04/08追加
下記『第5回AU-EU首脳会議』ではそれまでの『EU-アフリカ首脳会議』から名称を変更し、EUAUに対する尊重の思いを表した……と言われていますが、その中身を見る限り、何が変わったのか理解できません
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各国代表が集うEUアフリカ首脳会議(2000年より)は、原則としてエリア別に別れた対アフリカ戦略を共通化させる場となっています。が、それ故に首脳会議での共同宣言は具体的な貿易協定よりも、生存環境支援(食料・保健・教育等)を網羅する傾向があります。
https://www.consilium.europa.eu/en/meetings/international-summit/2017/11/29-30/
"5th Africa union- EU summit concilium"
『第5回AU-EU首脳会議』2017/11/29-30

※中国

国家・産業が一体となり、政治・経済・国家防衛と多方面に進出。自国融資と受注企業の紐付けや、安価な条件設定で他国融資の案件を受注していますが、これは中国がOECD(経済協力開発機構)に加入していないことが理由です。
OECD加盟国では融資の自国企業紐付けが制限されております。また受注企業もインフラ整備時の環境調査などの義務により別途費用が必要なのです。しかし、中国はOECDの制限を受けず、結果他の先進国より有利な受注が可能となっているのです。

この中国のアフリカ進出を後押しするのが、2000年より始まったFOCAC(中国アフリカ協力フォーラム)です。
開催タイミング・規模などTICADと類似点が多く、何かと日中のアフリカ政策を巡る発言で比較されるフォーラムです。

しかしFOCACはアフリカ開発に限定せず、

  • 付属機関であるCABC(中国アフリカビジネス会議)により、官民で推進される貿易や企業進出
  • テロリストに対する国家防衛協力

などを含む多方面の発展協力を宣言する場であり、同時にOECDや先進国からの不透明性の指摘に対して中国の正統性をもって対決する場ともなり、政治外交色彩も強いフォーラムとなっています。

TICAD と FOCAC:日中「協調」下の対アフリカ開発協力のあり方 』
高橋基樹……申し訳ありません。環境の問題かURLが貼付できません。

https://www.ide.go.jp/Japanese/Data/Africa_file/Manualreport/cia04.html
『アフリカにおける中国—戦略的な概観』第4章
Exclusive Research Associates 2009/10

FOCACについては、下部組織の構造等を含めこちらが詳しいでしょう。特に後者は一帯一路など最近の傾向には触れておりませんが、現状のFOCACが上辺の変化に留まっていることが見えてくると思います。

※日本

他国と比較して日本の対アフリカ政策の特徴を抽出する場合、まず大きな違いは輸出入貿易のウェイトの低さではないかと思われます。

アフリカ開発に関わる事業や、企業のアフリカへの直接進出には高い関心が寄せられる割に、
他国のアフリカ貿易の伸びに比べ、残念ながら日本のそれははるかに少ないのです。


次に、EUなど「OECD加盟国の中で」比較すると、支援内容が物流など経済インフラのウェイトが高いことが挙げられます。
これは前述の、貿易のウェイトの低さも要因の一つでしょう。貿易利潤が政策の根元であるEUなどと異なり、OECDが許容する一定条件のもと、一部経済インフラ融資を日本企業に紐付けで行わなければ、アフリカ政策の費用対効果まで問われることになります。

因みにこの経済インフラへの注力と、その結果として生じる「紐付け融資比率」「有償借款比率」それぞれがOECD諸国の中では上位となっており、2010年にはOECDから是正勧告が出されていますし、その後もあまり改善していません(但し、勧告に対してOECDへの反論を試みた訳でもありませんでした……最近までは)。


最後の特徴として、AU(アフリカ連合)による統合アフリカを重視する姿勢が挙げられるでしょう。

これも貿易へのウェイトが低く、アフリカの特定国や地域共同体に肩入れする必要性が比較的少ないという事情が根底にあります。
また特定企業間による貿易利潤が少ないため、経済インフラ融資が日本に還元されるには、彼らの国内市場規模が多角的に……言い換えれば大陸外貿易だけでなく大陸内向け産業も同時に発展し、需要のパイそのものを拡大させるのが、遠回りではありますが確実なのです。

そしてこの点こそ、大陸内の統合発展を目指すAUを最終目標に向けて日本が後押しする理由だ、と私は考えています。
逆に貿易利潤を前提とする他国の場合、大陸内の国内産業成熟は必ずしも自国の利益還元に必要なものではなく、アフリカ諸国との貿易発展に直接結びつかない方向の統合発展は望まない、という認識なのではないでしょうか。


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TICADと他国のフォーラムを比較するため、各国の対アフリカ政策を含めてまとめましたが、ことTICADについて論じる本文とは合わないため、別途補論としました。

なお各国の特色を纏めるにあたり、各種資料をツギハギしたため、貼付資料の内容と本文の意図が合致しない場合が在ること、ご了承願います。