首相欧州訪問と欧州議会選挙 目次

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2019/4/22~/29、安倍首相による欧米諸国訪問のうち特に欧州訪問について、特に5/23~/26の欧州議会選挙との関係にスポットを当ててまとめたものです。

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1. 首相欧州訪問(2019/04)と欧州議会選挙(1)

安倍首相の欧州訪問の概要について
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/05/211851

2. 首相欧州訪問と欧州議会選挙(2)

安倍首相が外遊で特に強調した『WTO改革』と
データ流通・ガバナンスへの新たな枠組み『大阪トラック』の概要
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/05/212131

3. 首相欧州訪問と欧州議会選挙(3)

首相外遊の理由について、特に今回イレギュラーの人選といえるイタリア副首相サルヴィーニにスポットを当てて
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/05/212511

4. 首相欧州訪問と欧州議会選挙(4)

サルヴィーニについて、欧州議会選挙及び選挙のもう一つの目玉、V4諸国(ハンガリーポーランドチェコ・スロバキア)にスポットを当てて
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/05/213104

5. 首相欧州訪問と欧州議会選挙(5)

首相欧州訪問の動機そのものについて、アメリカの欧州議会選挙への干渉と、トランプ-V4諸国首脳会談にスポットを当てて
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/20/194214

おまけ: 大阪トラックとファーウェイ制裁

大阪トラックとは何『だった』かという予想と、ファーウェイ制裁がG20サミットで大阪トラックを牽制する理由について
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/26/235743

首相欧州訪問と欧州議会選挙(5:完結)

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首相欧州訪問と欧州議会選挙(4)

https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/05/213104
の続きとなります。

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6. アメリカの対欧州外交


なぜ欧州選挙のパワーバランスを重要視したか。

実のところパワーバランスを重要視したのは日本以上に、欧州の次に訪問したアメリ
ではないか、と考えています。


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以下は、安倍首相外遊が終了した5月以降のアメリカ及び関係諸国の活動を一覧にしたものです。

5/3

5/5

5/6

  • 米国務相、北極協議会にてロシア・中国糾弾。
  • 米国務相-ロシア外相会談

5/7

  • 米特別代表(対北朝鮮)、日本・韓国訪問

5/8

  • 米国務相-英国首相・外相会談
  • 米、対イラン貿易制裁追加(鉄鋼)
  • イラン、核合意一部撤回(余剰核燃料を国内貯蔵)
  • ロシア外相-イラン外相会談

5/9

  • 米国務相-ブラジル外相電話会談

5/10

  • 米中閣僚級通商協議、物別れに。

5/11

  • 米国務相、クレアモント研究所スピーチ

5/12

  • 河野外相-ロシア外相会談

5/13

  • 米国務相-英独仏外相会談予定(ロシア訪問短縮)
  • 河野外相-タイ外相会談
  • 河野外相-ASEAN事務総長会談

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この5月に入ってから、アメリカは対イラン・ベネズエラ・中国・ロシアと、立て続けに攻撃的外交を繰り返しています。

一方EUに対する政策は、EUをターゲットとした自動車関税措置こそ期間延長されましたが
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-05-17/PRNHNB6S972C01
『トランプ氏、日欧自動車関税発動を180日延期-USTRに交渉指示』
Bloomsburg紙 2019/05/17
(米政府高官からの発表は5/15ですが、この当時既に延期の推測はされていました)

  • EU中枢国ドイツ首脳との会談を中止
  • イギリス首脳会談はスケジュールを組み直し実施
  • EU懐疑派の代表であるV4諸国首脳が(その多くが前月末には一帯一路フォーラムに参加したにも関わらず)トランプ大統領との会談を行う 

など、明らかに5/23~/26の欧州議会選挙を目前に、EU加盟国のパワーバランスを懐疑派寄りに崩しかねない活動を繰り返していたのが判ると思います。


なお、EU懐疑派の代表であるV4諸国(ハンガリーポーランドチェコ・スロバキア)への交渉は、既に2019年2月のポンペオ外遊を皮切りに行われており
https://emerging-europe.com/intelligence/the-us-has-not-given-up-on-central-europe/
アメリカは中央ヨーロッパをあきらめていない』
Emerging Europe紙 2019/02/22

約2ヶ月後に行われた安倍首相V4諸国訪問は、丁度このポンペオ外遊の跡をなぞる形であり、また5月以降相次ぐV4首脳陣の訪米に先駆ける形で行われたものだった訳です。

https://spectator.sme.sk/c/22112974/trump-i-would-love-to-visit-slovakia.html
『トランプ:私はスロバキアを訪問したいと思います』
Slovakia Spectator紙 2019/05/04

https://www.voanews.com/a/trump-czech-prime-minister-babis-have-much-in-common/4818573.html
『トランプとチェコ首相は共通点が多い』
Voice of America紙 2019/05/08

https://edition-m.cnn.com/2019/05/13/politics/trump-hungary-viktor-orban/index.html?r=https%3A%2F%2Fwww.google.com%2F
『過去の大統領が避けたハンガリー最右翼のナショナリスト首相を、トランプは歓迎します』
CNN 2019/05/14


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……なお、このV4諸国首脳とトランプ大統領の会談については、ハンガリーと並ぶEU懐疑派のポーランドのみ後回しとなっています。


特にモラヴィエツキ首相の4/18訪米時、トランプ大統領はおろか会談に応じた閣僚がいなかった、というアメリカ側の冷淡な対応が話題となりました。

〉“トランプの人々はモラヴィエツキを避けます”
〉ニューヨークに加えて、Morawieckiはまたシカゴを訪問し、そこで彼は映画「ポーランド:王室ツアー」の初演に参加し、そこで彼は監督をピーターグリーンバーグに見せる。彼はアメリカ政権のいかなる代表とも会わなかった。

http://wyborcza.pl/7,75399,24682108,morawiecki-w-usa-zmiany-w-sadownictwie-jak-rozliczenie-z-francuskimi.html?disableRedirects=true
アメリカでのモラヴィエツキ首相:フランスの共同研究者との和解としての司法制度の変化』
Wyborcza.pl紙 2019/04/19


これには2019/02/13にポーランドで行われた中東和平会議の際、
https://www.google.com/amp/s/www.sankei.com/world/amp/190214/wor1902140007-a.html
『米主導の中東会議開催 イラン包囲網目指すも欧州と溝』
産経新聞 2019/02/14

あまり政治的でない理由により、主催国であるポーランドと、中東からの数少ない参加同盟国イスラエル間の関係が悪化、
https://www.google.com/amp/s/jp.mobile.reuters.com/article/amp/idJPKCN1Q800P
ポーランドイスラエルとの首脳会談中止 ホロコースト巡る発言で』
Reutet紙 2019/02/18

ポーランド政府の発表により、同月に予定されていたV4+イスラエルサミットが中止に至る程の状況となった事が
https://www.lidovky.cz/svet/summit-v4-v-jeruzaleme-se-rusi-kvuli-neucasti-polska-ktere-pobourily-vyroky-netanjahua-o-holokaust.A190218_121941_ln_zahranici_form

ホロコーストに関するネタニヤフの声明を憤慨したポーランド離脱のため、エルサレムのV4サミットは廃止』

Lidovky紙 2019/02/18

当時イスラエル側の肩を持ったポンペオ米国務相の発言を含めて、
https://www.timesofisrael.com/pompeo-in-poland-urges-the-country-to-pass-holocaust-restitution-legislation/
ワルシャワでは、ポンピオはポーランドホロコースト補償法を可決するように促します』

The Times of Israel紙 2019/02/14

アメリカとの距離感、更には一帯一路フォーラムにV4諸国で唯一不参加、という形で中国との距離感にまで影響したと見られます。


5/13に駐ポーランド大使モスバッハがツイッター
https://mobile.twitter.com/usambpoland/status/1127877931911589888
〉繰り返しますが、JUST法(447)は誰にも経済的または法的な負担をかけません。これは米国議会のための一回限りの報告であり、その目的は賠償の分野における諸国の活動の進展を分析することです。

と述べ、更にアンジェイ・ドゥダ大統領が訪米する6/12にトランプ大統領夫妻が会談に応じる旨、5/15に公表され(ドゥダ大統領の訪米は当初から予定されていましたが、会談については「交渉中」のままでした)、
いわば欧州議会選挙に向けたアメリカ側のバスに、ギリギリで乗り込んだ格好となりました。
https://pl.usembassy.gov/pl/komunikat_duda/


4/23の日本-ポーランド首脳会談には、このような不安定な立場にあるモラヴィエツキ首相の意向を探る意味が含まれていたでしょうし、この会談の冒頭でモラヴィエツキ首相から
https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/c_see/pl/page6_000296.html
〉前回お会いしてから期間をおかずに会えて嬉しい

という発言があったのも、この辺りの日本の真意を汲んだものだと思われます。


トランプ大統領が数多の反対に応じず、5/13にハンガリー首相との会談を行ったのは、このポーランドの事例と真逆の構図だったと考えられます。

〉“「公正でバランスの取れた立場でイスラエルに対応する場合、アメリカとハンガリーは同じ側にいるでしょう。EUは多くの問題に関してハンガリーの立場とは異なる立場をとっているが、ハンガリーは必要に応じて(EUとの)団結を破り拒否権を主張する用意がある」とオルバン首相は付け加えた”
https://thehungaryjournal.com/2019/05/15/szijjarto-trump-and-orban-share-similar-approaches-in-many-issues/
『Szijjarto:トランプとオルバンは多くの問題で同様のアプローチを共有しています』
Hungary Journal 2019/05/15

この会談でオルバン首相は、イスラエルとの国交について触れていましたが、恐らくはこのポーランドの轍は踏むまいと神経を尖らせていたからなのでしょう。


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7. 日米タッグ外交における日米の思惑


……外務省HPでも「状況が許す限り」という前提であった5/12のロシア、或いは発表当時はタイミングを疑問視されていた4/28のサウジアラビアとの外相会談の様に、この時期の日本・アメリカの外交は

何らかの理由で会談が難しい他国とのコンタクトを望む場合、比較的接点の多いもう片方の国が事前に当該他国との根回し交渉に臨んだり、
或いは両国首脳が立て続けに対象国と会談を行うような、アメリカとのタッグ外交の形をとる
ことが増えていました。


その流れから考えて、今回の首相欧州訪問国決定の決め手となったのは恐らく

2月にポンペオ国務相が打った布石を確認し、5月からのアメリカ訪問に対するV4諸国の警戒心を解き、
また、サルヴィーニ副首相を含め、V4諸国と並ぶ欧州議会選挙の重要ファクターであるイタリアの意向を確認する

という、アメリカ側からのオファーに応じたものだったのではないか、と考えられるのです。

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アメリカが情報・国防関連でV4諸国に露骨に接近する事に伴い、自らの行為で欧州議会のパワーバランスが崩れることを憂慮したのか、
或いはEUの自主性を削ぐべくV4諸国やイタリアなどEU懐疑派を積極的に懐柔するため、安倍首相に根回しを依頼したのか、その部分には言及しません。


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日本側としても、今回の訪欧はアメリカの要望に応じる形で恩を売り、G20への布石とする効果があるだけでなく、

『中国とアメリカ双方の間を行き交いながら、EUの秩序に対する挑戦を行う』イタリアやV4諸国に対して、
一帯一路フォーラム開催前後というタイミングに日米側の意志、それも「情報通信関連を除いた」中国との親交を不問とし、引き続きアメリカとの二国間会談はオープンであるという、政治力を含んだ会談をヨーロッパ方面に行いえる、貴重な機会となりました。


同時に欧州議会選挙で懐疑派の躍進を覆し得ないEU中枢に対しては、共同声明を通じてわずかながら選挙への追い風を提供しただけでなく
懐疑派諸国への事前訪問を行い、かつ彼らに国際協調についての前向きな表明を行わせた事により、
安倍首相こそEU中枢と懸念事項を共有出来ることを確信させたという形で、G20への根回しを成功させた訳です。

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なお、一連の文章の目次を作成いたしました。
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/23/194237
こちらのURLへお願いいたします。

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8. 蛇足: 5/13以降

さて蛇足ではありますが、今回の安倍首相の欧州外遊について、
5/13以降のイランを中心とする国際情勢の変化により、特にアメリカに対する貢献は無駄になってしまった疑いがあります。

5/13にポンペオ国務相が急遽モスクワ訪問予定をブリュッセル行きに変更、イラン対応についてEU中枢国外相などと会談を行って以降、
アメリカは欧州に対する活動への興味を失い、また日米タッグ外交は安倍首相外遊によるアメリカへの功績も含めて解消されてしまったようなのです。


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5/14

  • 米国務相-ロシア大統領・外相会談
  • イラン外相-インド外相会談

5/15

  • 米高官、輸入車関税増の中止について発言

5/16

  • 米国務相-香港民主化リーダー会談
  • 安倍首相-イラン外相電撃表敬
  • 河野外相-イラン外相電撃会談

5/17

  • 米商務省、ファーウェイを禁輸措置対象に
  • 安倍首相-中共政治局委員による表敬(当初は国家安全保安局長が対応予定)

5/18

  • アメリカ、対カナダ・メキシコ金属追加関税撤廃
  • イラン外相-中国外相会談

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G20大阪サミットの重点議題、データガバナンスと自由化の枠組み“大阪トラック”声明の成否は、ファーウェイへの禁輸措置の末、主導権をアメリカに握られてしまいました。
https://www.google.com/amp/s/jp.mobile.reuters.com/article/amp/idJPKCN1SL2VS
『中国ファーウェイ狙い撃ち、米政権が排除措置を相次ぎ発表』

Reuter紙 2019/05/15

※さらに5/19の報道ですが、5/27の日米首脳会談では現在『共同声明は行わない』予定とのこと。
https://www.google.com/amp/s/www.asahi.com/amp/articles/ASM5N36PVM5NUTFK008.html
『日米首脳会談、共同声明を見送り 貿易交渉の合意は困難』

朝日新聞 2019/05/20

貿易交渉や対北朝鮮政策の乖離が原因、との事ですが……時期的にはむしろ大阪トラックなどG20に向けた各共同声明を保留し、主導権を維持しようという意図があるのでしょう。


また中露に目を向けがちな各国に対してすら、アメリカがオープンであることを示す場であったV4首脳の訪米も、
https://www.theguardian.com/commentisfree/2019/may/16/trump-orban-democracy-us-hungary
『トランプとオルバンの連携は、非合法民主主義がアメリカに根城を置くことの現れ』

The Guardian紙 2019/05/16

特にハンガリー首相オルバンとの非民主的連携が報道にクローズアップされるばかりとなり、諸会談の露払いとなった日本の貢献も無視されています。


何よりこの外遊で得たであろう日本外交のプラス評価は、イラン外相の電撃来日の結果、原則論でしか対応出来ない無力さを指摘されかねない状況になりました。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_007411.html 外務省HP
(というよりなぜロシア・インドと来て、中国より先に日本に来たのか……?)


結局のところ首相欧州訪問は、イレギュラーな事態の末
短期的にはG20の、長期的には欧州議会選挙以降のヨーロッパ情勢への根回しまでは行い得たが、効果は欧州方面に留まり、アメリカに対しての根回し効果はあまり無かった模様。

寧ろG20ですら、自国のイニシアティブを維持しようと暴れる米中を宥めるため、従来国際協調を持ち出す立場だったEUの代わりに、矢面に立って主要議案を通す状況に持ち込まれてないか、と心配です。


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なお、大阪トラックについて文章をまとめました。
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/06/29/223127
目次はこちらのURLまでお願い致します。


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……当初は5/13のオルバン・トランプ会談をもって
今回の文章を締めようと思っていたのが、
国際情勢急転によりなかなか締められなくなりました。

本当であれば、欧州議会選挙やそこから始まり得る未来像や、日本の布石が今後どのように国際情勢に影響を与えるか、その辺も触れられればと思ったのですが、先週来の国際情勢には振り回されてばかりです。


まともに締められず、申し訳ありません。 (了)


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すみません。国際情勢はともかく、先週来自分が体調を崩してしまい、情報収集や文章をまとめるのもままならない状況で、尻切れトンボになってしまいました。

次の文章は、一月ほどお休みを頂きます。
体調のせいではありません。掘り終わったら戻ります。

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首相欧州訪問と欧州議会選挙(4)

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『首相欧州訪問と欧州議会選挙(3)』

https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/05/212511
の続きとなります。


なお、一連の文章の目次については
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/23/194237
こちらのURLへお願いいたします。


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4. サルヴィーニ副首相と欧州議会選挙

このイタリア副首相サルヴィーニですが、同じく副首相のディマイオ氏と並び、現政権ではコンテ首相以上の発言力を持っています。

コンテ政権は右翼ポピュリズム政党“Lega”と左派ポピュリズム政党“Movimento 5 stelle”とが、反EUという立場から連立した政権であり、
コンテ首相自身は実際このLegaのトップであるサルヴィーニと、Movimento 5 stelleのトップであるディマイオが共に指名した傀儡的人物に過ぎません。


そして今回の15分の会談(?)は、実は日本の閣僚として、イタリアの最高権力者サルヴィーニの“謁見”を初めて許された場だった訳です……


が、サルヴィーニ側の思惑はともかく、なぜ日本側というより安倍首相は、サルヴィーニとの会談に応じたのでしょうか。


表向き2国間の親密なパートナーシップを結ぶよりも、G20関連などの国際協調を謀る色彩が強かった今回の外遊については、実際のところコンテ首相との会談のみで十分だった筈です。

では何故わざわざ、今回サルヴィーニとの会談に応じたのか?
今月末(5/23~26)行われる、欧州議会選挙がその鍵になるのではないか、と思われます。

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この欧州議会選挙ですが、
http://eumag.jp/questions/f0419/
『2019年欧州議会選挙について教えて下さい』
ウェブマガジンEUMag 2019/04/09
こちらが解りやすいでしょう。


〉Q3. 今回の選挙の注目点はどこにありますか?

〉しかし、最も注目すべきは選挙結果です。1979年以来、中道右派キリスト教民主党系の「欧州人民党(EPP)」と、中道左派社会民主党系の「社会民主進歩同盟(S&D)」が2大政治会派を形成し、慣例として議長などの職務を2年半ずつ交替で務めてきました。(中略)

〉今回の選挙では、2つの政治会派を合わせても過半数に届かないのではないかと予想されています。(中略)

〉その原因は、多くの加盟国で総選挙や大統領選挙などで大衆迎合主義的なポピュリスト政党が躍進し、連立内閣に入閣したり、イタリアのようにポピュリスト2政党(「同盟」と「五つ星運動」)による連立内閣も誕生したりしているからです。すでに前回の2014年欧州議会選挙でも、フランス、英国、デンマークでポピュリスト政党が第一党となり、全体としても反緊縮政策、反外国人、反移民・難民、反イスラムなどを訴える欧州懐疑的な議員が約25%を占めました。

〉今回の選挙では、右翼にはフランスの「国民連合」(旧「国民戦線」)、イタリアの「同盟」、ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」、オランダの「自由党(PVV)」、オーストリアの「自由党(EPÖ)」、左翼にはギリシャの「急進左派連合(SYRIZA)」、スペインの「ポデモス(私たちはできる)」、イタリアの「五つ星運動」など、ポピュリスト政党の大躍進が予想されています。

〉このため、欧州委員会委員長候補者の選出をはじめとするEUの主要ポストの人事やEUの諸政策について、政治会派の連立交渉がこれまでと比べてはるかに難しく、複雑になることが予想されています。


こう記されているように、サルヴィーニのLega(和訳だと「同盟」)など右翼、ディマイオのMovimento 5 stelle(「五つ星運動」)など左翼などのポヒュリスト政党……というより、EU懐疑派が今回の選挙では躍進すると考えられており、Euractivその他多くの分析では議員数の1/3を越えると見られています。
https://www.euractiv.com/section/eu-elections-2019/news/european-elections-a-divided-european-parliament-risking-paralysis/


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5. ハンガリー首相オルバン: EU懐疑派連合とV4(Visegrád)諸国


https://www.google.com/amp/s/www.businessinsider.jp/amp/post-185431
『フランスとイタリアが大戦以来の仲違い。EUの危機の背景を読み解く』
BusinessInsider 2019/02/19

〉ディマイオ副首相(兼経済発展相)らがマクロン仏政権に対する抗議デモ「黄色いベスト運動」の幹部と会合を持ち、支持を表明

〉サルヴィーニ副首相も1月、仏国民が「ひどい大統領から逃れられる」よう期待するなどと踏み込んだ批判を展開

https://www.reuters.com/article/us-europe-migrants-italy-germany/salvini-tells-germany-to-handle-migrant-boat-heading-for-italy-idUSKCN1RG2F8
『イタリアに向かう移民船を処理するよう、サルヴィーニがドイツに伝える』
ロイター 2019/04/05

〉サルヴィーニは、ドイツのチャリティーボートが地中海で救助し、イタリア沿岸に向かう64人の移民の責任を取るようベルリンに語った

〉「私はドイツの内務大臣に、(救助した)自称ドイツ船に介入し、この問題を解決するように依頼しました」とサルヴィーニはG7内務大臣サミットでパリの記者団に語った

二人のイタリア副首相が、EUの中心国フランス・ドイツとの対立姿勢を明らかにしていく中、
主にサルヴィーニ側の主導で行っていたのが、EU諸国の右翼ポヒュリスト政党に対する共闘の呼びかけでした。

サルヴィーニは右翼政党Legaの代表として、欧州議会での発言力を増すため、EU諸国の右翼政党との共闘を持ちかけているのです。

https://www.google.com/amp/s/www.sankei.com/world/amp/190110/wor1901100032-a.html
EU懐疑派、欧州議会選へ結集模索 伊内相、ポーランド実力者と協議』
産経新聞 2019/01/10

〉サルビーニ副首相兼内相が9日、ポーランドを訪問し、同国の保守系与党「法と正義」のカチンスキ党首と会談した。5月に行われるEUの欧州議会選挙に向けた連携について協議。EUに懐疑的なポピュリズム大衆迎合主義)勢力による会派や欧州の東西を超えた結集を目指す動きが本格化

〉サルビーニ氏は中道右派に属するハンガリーのオルバン首相にも接近。ドイツの新興右派、ドイツのための選択肢もサルビーニ氏との連携を排除していない

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190426-00000089-jij-eurp&pos=2
『極右政党、欧州議会選へ気勢=プラハで集会、統一会派結成も』
時事通信 2019/04/26

〉移民排斥や反欧州連合EU)を掲げる欧州各国の極右政党党首が25日、プラハで合同集会を開き、5月の欧州議会選に向けて「新たな欧州の調和を実現する時だ(フランスの国民連合=RN=のルペン党首)」などと気勢を上げた。

〉集会は、日系チェコ人のトミオ・オカムラ氏が率いる同国の政党「自由と直接民主主義」が主催。このほかオランダのウィルダース自由党党首が参加し、「EUはわれわれのアイデンティティーを破壊する怪物だ」と訴えた。イタリアの「同盟」を率いるサルビーニ副首相もビデオメッセージを寄せた。


……そしてこのEU懐疑派がEUの主導権を握るための核となる、いわゆるポヒュリスト政党が国政を握っている国家こそ、今回安倍首相が会談を行ったイタリア及びハンガリーポーランドチェコ・スロバキアで構成されるV4(Visegrád)諸国だった訳です。

………………………………………

※ところで、これらV4やイタリアの与党をまとめて「ポピュリスト」と呼ぶ場合、特に財政政策面で混乱してしまうかも知れません。

イタリアのように、放漫財政政策を通じて国民の人気を得ようとする場合もあれば、
ハンガリーのように財政健全策(所得・消費増税等)を行うはけ口として、移民排斥や自国産業保護などのポピュリスト政策を利用する場合もあるのです。

https://www.scgr.co.jp/report/survey/2017083127864/
ハンガリー経済の現状と課題』
住友商事グローバルリサーチ 2017/08/31

幾つかの報道の流れから、彼らを一括りにする際に「ポヒュリスト」の語を使うかもしれませんが、
今回の文章では単に「極右政党以外も含むEU懐疑派」を言い換えただけ、と思う方が良いかもしれません。


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https://www.theguardian.com/world/ng-interactive/2018/nov/20/how-populism-emerged-as-electoral-force-in-europe
ポピュリズムは欧州で如何に選挙力として出現したか』
Guardian紙 2018/11/20

〉最大の進歩は中央および東ヨーロッパで行われました。ハンガリー・オルバン大統領のFidesz(今年の選挙で投票の63%を獲得した)とポーランドヤロスワフ・カチンスキ元首相率いるPiS(注:モラヴィエツキ首相の所属政党)を含む、いわゆるV4すべてが、ポピュリズム政党によって守られている。

この記事にあるように、ハンガリーFidesz、ポーランドPiS、チェコのAno2011及びスロバキアSmer-SDと、V4諸国全てがポヒュリスト政党を与党とし、彼らの政党から首相が選出されています。

そしてV4諸国(ハンガリーポーランドチェコ・スロバキア)の中でも、移民問題のみならず自国の独自政策の末にEUから最も重い処分を提案されたハンガリーポーランドは、特にイタリアと同調し欧州議会選挙でのEU懐疑派による共闘へと向かっているのです。

https://www.google.com/amp/s/www.sankei.com/world/amp/180925/wor1809250027-a.html
『EU、ポーランド提訴、ハンガリーにも制裁手続き』
産経新聞 2018/09/25

欧州連合(EU)の欧州委員会は24日、ポーランドが施行した最高裁判所に関する新法について、司法の独立を侵害するとしてEU司法裁判所に提訴することを決めた。EUは今月、EUの基本理念に違反したとしてハンガリーへの制裁手続きにも動き出した。東欧2カ国の現政権による強権政治が大きな懸念となる中、相次ぐ措置で是正への圧力を高める狙いだ


※なお、ポーランドハンガリーに対して提案された、議決権停止というEU最高レベルの制裁となる“EU基本条約第7条”とその手続については、
https://www.bbc.com/news/world-45485994 
EUハンガリーにどのような制裁を与えうるか』
BBC 2018/09/12
こちらが解りやすいかと思います。


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……ここまでで、今回安倍首相が訪問したフランス(こちらはEU懐疑派と対立する側ですが)及びEU懐疑派のイタリア及びV4諸国の背景と、
今回の時期が丁度欧州議会選挙の選挙活動期直前に当たり、EU懐疑派国家の動向を探るのに適していたことを記しました。

では安倍首相が、その後の米国・カナダを含めて『他国よりも上記国家を優先して訪問した理由』は何でしょうか。

4/25~/26には一帯一路フォーラム、
4/30には即位改元に伴う諸行事があり、
更に5~6月には閣僚会合を含めたG20サミット、
8月にはTICAD7(アフリカ開発会議)が開かれます。

これら重大な事項をさしおいて、
つい数ヶ月に会談を行ったばかりのフランス・イタリア・V4諸国に、それも一帯一路フォーラム参加閣僚のスケジュールの間隙を突くタイトな訪問を行わなければならないほど、欧州議会選挙のパワーバランスに配慮した理由は何なのでしょうか。

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次回、
『首相欧州訪問と欧州議会選挙(5)』
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/20/194214
に続きます。

首相欧州訪問と欧州議会選挙(3)

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『首相欧州訪問と欧州議会選挙(2)』

https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/05/212131
からの続きとなります。

なお、一連の文章の目次については
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/23/194237
こちらのURLへお願いいたします。


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3. イタリア副首相サルヴィーニ


『なぜこれらの国を廻ったのか』という疑問です。

折しも、中国における「第2回一帯一路国際協力サミットフォーラム」が開催(4/25~27)された時期であり、勿論それを念頭に置いての外遊だったと思います。
ただし「念頭に置く」だけで、一帯一路への不参加を要請したり、フォーラム参加国に色々吹き込むような外遊では在るまい、と(それを行うには時期が遅すぎます)。

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…ということで、各国での会談内容から考えて見ることにします。

  • A: 「自由で開かれたインド太平洋」への協力が盛り込まれたのは、仏伊2国及び欧州委員会(此方では東・南シナ海への危機意識共有でしたが)。
  • D: イギリスの合意無き離脱、環境問題及び前述した「WTO改革」と「大阪トラック」については、全ての国で議題に(V4諸国については、データガバナンスの重要性のみに止まっていますが)。
  • F: 逆に首相より名義上格下の相手と個別対談したのは、イタリア副首相サルヴィーニのみ。


………………………………………

A: に関しては、あくまでインド太平洋上の話であり、海洋保全・交易面で同海域との縁が薄いV4諸国にはあまり関係のない話……と思ったのですが……

実は昨年10月にV4+1会談を行った際
https://www.mofa.go.jp/mofaj/page4_004423.html
外務省HP『第2回V4+日本首脳会合』2018/10/18

安倍総理は,アジアと欧州の安全保障の相互連関を指摘し,自由で開かれたインド太平洋の実現に向けてV4諸国を始めとする欧州諸国との協力を呼びかけました。

とのこと(反応は得られなかった模様)。


……となると、今回は意図的にV4諸国に対して「自由で開かれたインド太平洋」の提言を避けたと思われます。
更に言えば、たった半年で第3回会談を行った(第1回→第2回には約5年掛けています。)ことも、今回更に駆け足で二国間会談まで行ったことも含めて、このV4+1会談は奇妙ではあります。


B: についても、歴史的にアフリカとの縁が強い仏伊2国以外はあまり関係のない話ではあります。

逆に言えば、今夏のTICAD7においてアフリカ大陸のほぼ全ての国家と交渉を行う立場の日本としては、この2国からのアフリカ情報を入手する目的はあったかも知れません。
特に昨年末より、アルジェリアスーダン
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/04/16/002259
及びリビアでの政情不安が続いている訳ですから。

……さて、実は少し気になる記事が見つかりました。
リビアへの対応その他について、最近になって仏伊両国の関係が悪化しているとのことです。

https://www.brookings.edu/blog/africa-in-focus/2019/02/05/france-africa-relations-challenged-by-china-and-the-european-union/
『中国とEUが挑戦するアフリカ-フランスの関係』
Brookings紙 2019/02/05
〉イタリア副首相マッテオ・サルビーニは、リビアの安定化に向けたフランスの「無関心」を揶揄。「恐らくイタリアと異なる石油利権のためだ。」

ただし、この両国の関係悪化はリビアに留まらない背景があり、此方は後述F: の件で触れようと思います。


C: D: については、G20加盟など各国の状況による面が大きいでしょう。

E: についても、ハンガリー側の一帯一路との取捨選択の結果であり、日本としてもV4の元首代理として対応したに過ぎません。
また、ハンガリー首相オルバンについては、前述の通り昨年10月のV4+1会談で顔合わせは済ませています。


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……F: サルヴィーニ副首相についてですが、今回の会談(?)について、興味深い現地記事が2つ見つかりました


https://www.ilfoglio.it/esteri/2019/04/24/news/il-governo-conte-un-camaleonte-in-asia-251376/
『コンテ政権、アジアのカメレオン』
Il foglio紙 2019/04/24

〉Legaのリーダー(注:サルヴィーニ副首相)の閣僚によって直接「要求された」会議は、日本代表団が黄緑政権(注:コンテ政権)の他の部分から少しの連絡も受けなかったであろう


https://www.ilsole24ore.com/art/mondo/2019-04-25/salvini-lezione-abe-economia-e-immigrazione-182145_PRV.shtml?uuid=ABxBFirB
『サルヴィーニ、安倍首相の経済学と移民問題の講演会にて』
Ilsole24Ore紙 2019/04/25

〉Lega(注:サルヴィーニの所属政党)情報筋は、経済的、社会的、そして入国管理の問題について「完全な共有」があることを示しています。
〉結局、日本は高い公的債務にもかかわらず生き残り成長することを強調した事に対し、しばらくの間サルヴィーニは冗談を繰り返してきました:
“Japan model, Japan model. ”


…外務省HPで『サルヴィーニ副首相兼内務相による安倍総理大臣表敬』と発表されたような、
https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/we/it/page1_000781.html

安倍総理大臣から、日本は、自由、民主主義といった普遍的価値を共有するイタリアとの関係を重視しており、日伊で連携していきたい旨述べました。これに対し、サルヴィーニ副首相からも賛意が示され、アベノミクスや移民政策等につき非公式な意見交換が行われました。

からかなり乖離した15分会談(?)だったようです。
更に上記Il foglio紙では4/23の夕食会(外務省HPの日本食レセプション)で出席する予定を急遽キャンセルしたとの話も掲載されています。


※なおこの“Japan model”発言について、サルヴィーニ副首相がいわゆるアベノミクスをバカにして放った言葉、と解釈するのは難しいと思います。

〉日本の公的債務は非常に高いのですが、金銭的主権があります。
https://mobile.twitter.com/matteosalvinimi/status/832345611034906625

彼が2017年2月のツイッターでこう述べ、国債発行と自国通貨発行(及びそこからも帰結するEU離脱)による国家再建を唱えて以来、彼の経済政策は
“Salvinienomics”“Salvinomics”と称せられているのですから。
彼が軽視したのは、明らかに経済政策以外の安倍首相だったのでしょう。

https://www.lettera43.it/it/articoli/mondo/2019/04/07/giappone-debito-pubblico-sovranita-monetaria/230941/
『日本はサルヴィーニが信じるようなソブリン(国債・通貨発行主権両方の寓意かと)の楽園ではない』

Lettera43紙 2019/04/07


なお……サルヴィーニ(正確には彼と、同じく副首相のディマイオ)による経済政策案は

増税や緊縮財政ではなく成長促進での債務削減
公共投資財政赤字に含まぬようEU規則の変更
EUにおける対GDP比債務比率ルールの廃止
・売上高税、消費税増税予定の中止
・脱税者への制裁強化
・納税延滞者への恩赦
・退職(年金支給)年齢引上げ
・貧困者に月780ユーロの収入確保
 などなど。
https://www.reuters.com/article/us-italy-politics-economy-policy-factbox-idUSKCN1II1WH
『イタリアのMovimento5stelleとLegaによる経済政策草案』 
ロイター紙 2018/05/17より一部抜粋


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次回、
『首相欧州訪問と欧州議会選挙(4)』
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/05/213104
に続きます。

首相欧州訪問と欧州議会選挙(2)

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前回の
『首相欧州訪問(2019/04)と欧州議会選挙(1)』https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/05/211851
からの続きとなります。


なお、一連の文章の目次については
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/23/194237
こちらのURLへお願いいたします。


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2. 会談での中心議題、WTO改革と大阪トラック……前書きその2

今回、各会談で議題となった「WTO改革」「大阪トラック」は、経団連『B20サミット共同宣言』http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/020_honbun.pdf
に概要が記されており、海外首脳の反応から考えても、首相の提案はこちらに沿うものではないかと思われます。

なお、WTO改革については
『日米欧によるWTO改革案、ターゲットは中国 』

岡崎研究所評論集 WEDGE Infinity 2018/12/11
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=http://wedge.ismedia.jp/articles/-/14696&ved=2ahUKEwje4ZC6jfPhAhV3yosBHTRZC20QFjAAegQIAhAB&usg=AOvVaw0WA-R2ZTYHc0UcnJbegjhu

辺りに、既に海外諸国と連名での改革案が掲載されており、こちらが詳しいかと思われますが、実際に今回各国首脳とどのような形でコンセンサスを採ったのかは不明です。個人の感想としては、

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000473397.pdf
日本産食品の安全性に関するパネルの事実認定については争いがなく,本日この紛争解決機関によって採択されることを,全てのWTO加盟国が認識するよう求める

ような日本食品に関することではなく、ただWTO裁定のシステミックな問題のみに同意を求めたに留まると思います。
欧州委員会からは日本食の安全性について言及があったようですが、この辺は上記Politico紙でも突っ込まれていますので、EPA含めた先方からのリップサービス込みだと解釈出来るのではないでしょうか。


…………………………………

またデータ・ガバナンス、特に電子商取引に焦点を当てたG20で提案予定の「大阪トラック」については、
ダボス会議で提唱したとおりWTOの傘の元での“DFFT(Data Free Flow with Trust)”を構築する内容とされており、官邸HP 2019/01/23に
世界経済フォーラム年次総会 安倍首相スピーチ』https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2019/0123wef.html
で環境問題と並ぶ2大議題として触れられています。


このDFFTについて、

https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=http://fis.nri.co.jp/ja-JP/knowledge/commentary/2019/20190107.html&ved=2ahUKEwj6neDvyvThAhWF62EKHex8CbAQFjAAegQIBxAC&usg=AOvVaw2p6TTsk_nd-vsee-Ib9TJa
WTOでデータ取引の国際ルール作り』
Financial Solutions 2019/01/07
(こちらではDFFTの名称は出てませんが)

https://merpoli.mercari.com/entry/2019/03/20/070000
『Data Free Flow with Trustの意味を考える』

merpoli 2019/03/20

辺りで、その狙いや予想される姿に触れています。


日本の『大阪トラック』の実際の枠組みについては
内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室の資料に
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/detakatuyo_wg/dai6/siryou2.pdf&ved=2ahUKEwi1s_qBkvPhAhUSrpQKHWjyBI4QFjACegQIBxAK&usg=AOvVaw0lkmLqBYGj3HrmScv8hryg
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.kantei.go.jp/jp/singi/titeki2/tyousakai/kensho_hyoka_kikaku/2019/contents/dai5/siryou2-1.pdf&ved=2ahUKEwi1s_qBkvPhAhUSrpQKHWjyBI4QFjABegQIBxAG&usg=AOvVaw1IzyTPsO2nx0SL94Pnvzlr

解る人が見れば、ある程度の像が結ばれるのではないでしょうか(私には何がなにやら)。
なお、経済産業省のHPにこの“Data Free Flow with Trust”関連業務の担当職員募集要項が記載されており、職務のアウトラインのヒントになるかと思います。

https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&url=https://www.meti.go.jp/information/recruit/others/ninkitsuki/1906_tuusyousennryakusitu_ninkitsuki.pdf&ved=2ahUKEwiLmNiEkPPhAhX3wosBHUhUCR0QFjAAegQIBRAC&usg=AOvVaw2eYEM7YlildwjIvLYhF5KF


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なお、大阪トラック関連文章を別途まとめました。
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/06/29/223127
目次はこちらのURLまでお願い致します。


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まあそれはそれとして。前置きが長くなりました。

恐らく上記の内容については、各方面に詳しい方がもっと切り込んだ記事を作られるのではないでしょうか。
私としては、その記事が出て来るまでの繋ぎというか備忘録として、上記文章を作成したつもりです。


個人的に今回の外遊で気になったのは、

『この時期になぜこれらの国を廻ったのか』

でして、次回やっとそちらの話が書けるかと思います。


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次回、『首相欧州訪問と欧州議会選挙(3)』
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/05/212511
に続きます。

首相欧州訪問(2019/04)と欧州議会選挙(1)

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旬の時期を完全に逃したお話ですが、
先月末の安倍首相の欧米訪問(4/22~/29)について、今月末予定の欧州議会選挙(5/23~/26)との関係を含めてまとめた文章です。

なお、一連の文章の目次については
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/23/194237
こちらのURLへお願いいたします。

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1. 安倍首相の欧州訪問……前書きとして

https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/ep/page23_002942.html
4/22~/29の間、安倍首相がフランス・イタリア・スロバキア・ベルギー・アメリカ・カナダを訪問されました。

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フランスではマクロン大統領と会談

(一帯一路フォーラムにはドリアン外相が参加か)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/we/fr/page4_004924.html


イタリアではコンテ首相と会談、

(コンテ首相は会談後に、一帯一路フォーラム参加)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/we/it/page1_000783.html

マッタレッラ大統領への表敬訪問と、
(イタリアの制度上、大統領は儀礼的な側面が強い)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/we/it/page1_000782.html

サルヴィーニ副首相による表敬訪問(?)。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/we/it/page1_000781.html


スロバキアでは同国ペレグリニ首相、

(キスカ大統領は当日消息不明。6月政権交代予定。
一帯一路フォーラムへはライザック外相が参加)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/c_see/sk/page1_000785.html

チェコのバビシュ首相、

(ゼーマン大統領は一帯一路フォーラム参加)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/c_see/pl/page6_000296.html

ポーランドのモラヴィエツキ首相と会談、

(ドゥダ大統領は自国内出張…
ポーランドの一帯一路フォーラム参加は無し?)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/c_see/pl/page6_000296.html

更に上記3国及びハンガリー・ヴァルガ副首相
(首相及び外相は一帯一路フォーラム参加)ら
V(ヴィシェグラード)4国首脳+1会合に臨み、

https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/c_see/page1_000786.html


ブリュッセルではトゥスク欧州理事会会長及び
ユンカー欧州委員会会長との会談の後、

https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/ep/page1_000788.html

共同声明の発表に至っています。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000472826.pdf


特にこのブリュッセルでの共同声明を受けて、
politico紙は2019/04/26に


EU’s best Western ally is now in the East”

という表題の記事を掲載しており、今回の首相外遊を高く評価しているようです。
https://www.politico.eu/article/eus-best-western-ally-is-now-in-the-east/

……でも、
〉安倍首相はまた、日本が中国、特に「ベルト・アンド・ロード」構想に関するEUの懸念と目標を共有すると宣言
(以下略)

……共同声明でも外務省の会談要約でも、東・南シナ海の話はともかく、一帯一路そのものの話は出ていなかったような。


………………………………………

これら欧州歴訪の後、そのままアメリカ・カナダの会談に向かった訳ですが…今回の話題からは一旦外します。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/na/na1/us/page4_004940.html


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次回『首相欧州訪問と欧州議会選挙(2)』に続きます。

https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/05/05/212131

外交青書2019の要旨(2019/05/04内容変更)

2019/04/24、2019年度版外交青書の要旨と目次が外務省HPにて公開されました。

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000471203.pdf
2019要旨
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000471202.pdf
2019目次
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/2018/html/index.html
参考:外交青書2018

なお、外務省HPによると
https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/pp/page23_002506.html

〉6月以降、令和元年版として販売を予定しています。
〉また、外務省ホームページへの全文(日本語・英語)掲載は秋頃を予定しています。

……との事ですので、2019青書の具体的な特徴を考えるのは、もう少し時間を置いてからにしようと思います。


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  • 「自由で開かれたインド太平洋『戦略』」
  • 「対韓外交から『未来志向』」


削除の件が昨日から騒がれていましたが、北方四島の件以外は既に、それまでの

日米安全保障協議(2+2)

https://www.mofa.go.jp/mofaj/na/st/page4_004913.html
※日米安全保障協議(2+2)については、別途内容を補足する文章を作りました。
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/04/24/231422

第198回国会での外交演説

https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/pp/page3_002672.html

「安倍首相が封印した『戦略』の二文字--訪中前に中国への刺激避ける?」

BusinessInsider紙 (2018/10/26)
https://www.google.com/amp/s/www.businessinsider.jp/amp/post-178169

の内容に触れていれば自ずと予想できた事です。


外相記者会見(2019/04/23)での
河野外相と東亜日報・金記者の会話

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken4_000823.html

東亜日報 金記者】外交青書に戻りますけど,日韓関係の部分について,「未来志向」という表現が消えましたけれども,この部分について説明していただければ幸いです。

【河野外務大臣】「未来志向」が消えた?(以下略)

このわざとらしいやりとりには
「実際の外交内容より、言葉尻捉える方が大事か」という外相の思いを感じ取る事が出来るでしょう。


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2019/05/04補足:

4/23~/29の安倍首相欧米訪問を元に、改めて外交青書2019を振り返ると、


〉今世紀に入り、国際社会において、かつてないほどパワーバランスが変化しており、国際政治の力学にも大きな影響を与えている。

〉そして、国際社会においては、国家間の相互依存関係が一層拡大・深化する一方、中国等の更なる国力の伸張等によるパワーバランスの変化が加速化・複雑化し、既存の秩序をめぐる不確実性が増している。

〉こうした中、自らに有利な国際秩序・地域秩序の形成や影響力の拡大を目指した、政治・経済・軍事にわたる国家間の競争が顕在化している。

この部分の変更が浮き彫りになります。


因みに2018年度版では

〉21世紀に入り、中国やインドを始めとするいわゆる新興国の台頭や世界経済の重心の大西洋から太平洋へのシフトが指摘されてきた。

新興国の台頭は、世界経済の推進力となってきた一方、パワーバランスの変化をもたらしている。

……日本外交の脅威の対象が、自らの力で世界のパワーバランスを変えた中国ほか新興国から、
変化するパワーバランスを利用して既存秩序を崩壊させる国家へと変更されたわけです。

今回欧州で会談を行ったフランス・イタリア・V4諸国(ハンガリーポーランドチェコ・スロバキア)のうち、フランス以外はまさに

『パワーバランスの変化を利用して、自らに有利な国際・地域秩序の形成や影響力の拡大を目指す』

EU懐疑派の代表国家であり、G20直前のこの時期にあえて会談を行ったのも(会談の結果があえてこの時期に行う必要のあるものではなかった事も含めて)、外交青書の内容変更に象徴される新しい外交視点の現れだったのではないか、と考えています。


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今回取り上げた安倍首相の外遊については、別途文章を作成中です。もう少々お待ち下さい。