南ドイツ新聞の菅首相評価と、環境思想の先鋭・教条化(1)

はじめに

 

今回の文章は、南ドイツ新聞による菅首相への評価について記した第1章と、G20リヤドサミットで取り上げられた新たな温室効果ガス対策に対するEUの批判と日本の立場、及びそこから浮かび上がる国連の先鋭化・教条化について記した第2章以降の二部構成となっています。

 

特に第2章以降は、今後取り組む予定の一連の文章のプロローグとして記したものであり……ネタバレですが第1章とは扱う背景が異なります。

 

なお、この文章は世界的な温室効果ガス削減政策を批判したり、或いは日本を擁護しているのではなく、あくまで環境政策を含めて先鋭化・教条化した国連と日本の間で、ある時期ある種の軋轢があった事を記したものです。ついでにEUのコロナ復興基金のやり方や、グテーレス国連事務総長の無礼な発言を「暴走」と表現してはいますけどね。

 

 

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1. 『輝きのない首相』報道に関する、南ドイツ新聞記事の実際

 

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〉30日付のドイツ高級紙・南ドイツ新聞は、菅義偉首相について「輝きのない首相」と題する記事を掲載した。前政権の保守路線を継続する以外に「ほとんど野心がないように見える」などと批判的に論じている。

 

2020/12/01の時事通信に、上記記事が掲載されました。この南ドイツ新聞が報じた内容の要約として 

〉菅氏が電話会談でバイデン次期米大統領北朝鮮による拉致問題解決への助力を要請したことに関しても、気候変動や国際紛争などが焦点となっている世界情勢下では「優先順位は落ちる」と主張

と伝えています。

 

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しかし元記事の南ドイツ新聞ではこの部分、Innenpolitisch ist ihm der Start glatt misslungenの章で

 

“Das Thema ist so etwas wie ein japanischer Nationalkummer um Einzelschicksale - ernst zu nehmen, aber nachrangig bei einer Weltlage mit Klimawandel, internationalen Konflikten, gesellschaftlicher Spaltung und Pandemie.”

〉このテーマは個々の運命に対する日本の国民の悲しみのようなものです-真剣に受け止められるべきですが、気候変動・国際紛争・社会的分裂・そしてパンデミックという世界の状況に比べ、「優先順位は落ちる」ものです。

 

……拉致問題に対する日本政府の関心の高さとその経緯を十分認識しており、また拉致問題は気候変動や国際紛争だけでなく特に〜記事の多くが日本のGoTo政策に割かれているように〜パンデミック対応と比べて「優先順位は落ちる」と表現しているに過ぎないのです。

 

南ドイツ新聞の記事内容自体、慰安婦問題の認識はもちろん近隣諸国との領空・領海問題への言及を避けつつ菅首相の観閲式出席をJapan-Firstに結び付けたり、“wirtschaftsnahen, rechtskonservativen”ビジネス優先で右翼保守的と評するように、特殊な指向の強いものである事に変わりは在りません。

 

しかし時事通信の要約は元記事を更に助長し、自らの政府批判の箔付けに利用していることは念頭に置くべきでしょう。

 

拉致問題については保守路線を継承したという前政権の頃から、優先順位の高さをアピールしながらも実際の行動には踏み出せていません。タイミングの問題もあったのでしょうが、それだけ外交面ではサミット等の国際協調活動に、また政権末期にはパンデミック対応に追われていたのです。彼らのいうJapan-First国家にそのような選択はあり得たでしょうか。

 

 

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南ドイツ新聞の菅首相評価と、環境思想の先鋭・教条化(2) に続きます。