2020/10/13追加 宇都隆史外務副大臣による3つの会談について文章を追加しました。
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すみません。例によって他の文章を作成中なのですが、一応看過出来ない話でしたので。
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1. ドイツによる国連総会への中国人権問題提起
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今年7月香港国家安全法に関する問題提起をイギリスが行ったのに続き、10/06にドイツが改めて香港・ウイグルの人権問題を併せて国連の場で提起しました。
www-axios-com.cdn.ampproject.org
なお上記Axios紙には、ドイツ側に賛同した39ヶ国及び「ウイグルに関し中国を擁護する」キューバ主導の約45ヶ国の一覧は掲載されていますが、「香港に関し中国を擁護する」パキスタン主導の約55ヶ国は下記The Diplomat紙で確認可能です。
※The Diplomat紙は有料(月内無料閲覧記事数制限あり)につきご了承願います。
なお7月の香港関連は
2019年のウイグル関連は
こちらをご参照下さい。
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……とりあえず今回のドイツ側の共同声明はこちら。
キューバ及びパキスタンの声明は上記Axios紙などからご確認ください。
リンク先が中国政府系のHPになっており、The Diplomat紙はリンクを避けた模様です。
※今回ドイツ側が香港・ウイグル両方の問題提起に賛同する署名を行ったのに対し、中国側が香港(パキスタン主導)ウイグル(キューバ主導)といった形で声明を分けたことは注目に値します。
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2. ウイグル・香港問題それぞれの賛同・反対国
今回香港・ウイグルの人権問題提起に賛同した39ヶ国の明細をみると
「7月の香港の時と比べて」新たに加わったのが
- ブルガリア
- クロアチア
- ハイチ
- ホンジュラス
- イタリア(2019年のウイグル関連は「後で」賛同)
- モナコ
- ナウル
- 北マケドニア
- ポーランド
- スペイン
- アメリカ
なおベリーズのみ、前回の賛同リストから外れております。言い換えれば、台湾との国交の絡みで香港の署名に参加したと言われるパラオやマーシャル諸島は、今回は台湾国交の絡みを越え「ウイグル問題も含めて」ドイツ側に賛同したという事です。
(なおAxios紙では「2019年ウイグルの時と比較した」賛同国の変化に注目しているのでご参考ください。ただしAxios紙ではポルトガル・スロベニア・イタリアが総会後に追加賛同した旨反映されていない事に留意願います)
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7月と比較して中欧・東欧・中米からの賛同国が増えているのは大きな特徴と言えるでしょう。
その意味では寧ろ、8月に上院議長が台湾訪問を行って以来中国との関係が微妙となっているチェコが声明に加わっていないのは驚きです。
まあ実はミロシュ・ゼーマン大統領を筆頭に本来チェコ首脳陣には中国寄りの立場の人物も多く、チェコ外相も当初上院議長の訪台には反対していた事もあり、日本が期待する程には反中の状況ではないのですが。
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一方、今回初めて(今までの香港・ウイグル署名に加わらなかったのに)中国側として加わったのが
- アフガニスタン
- グレナダ
- キリバス
- マダガスカル
- タンザニア
の5ヶ国ですが、うちアフガニスタン・マダガスカル・タンザニアは7月の時点で国連人権理事会とは別の形で中国側の立場を示しており、実質としては
https://jp.mobile.reuters.com/article/amp/idJPKBN1W50I1
逆に前回香港・ウイグルどちらかで中国側の立場を示したのに、今回は表明を避けた国が
- ボリビア
- ブルキナファソ
- クウェート
- レバノン
- レソト
- ナイジェリア
- オマーン
- セルビア
- シエラレオネ
- スリナム
- タジキスタン
- トルクメニスタン
- ザンビア
と多岐に渡っています。
例えば中央アジアでは所属5ヶ国全ての国が中国側声明参加を避けました。
ヨーロッパで唯一(ベラルーシはコーカサス扱い)中国側の立場を示し、一帯一路の欧州側出口とも称されたセルビアも、今回は声明参加あるいは別の立場からの中国側擁護を躊躇しています。
……もっとも8〜9月にイスラエルと国交正常化を果たし、一見欧米側に引き込んだと誤解されるUAEやバーレーンは未だ中国側のウイグル・香港署名双方に加わっている状況です。
また7月の香港問題の時のように、今後国連総会以外の場で中国を擁護する国家が出て来てもおかしくない事には留意すべきでしょう。
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3. イタリアの声明参加と日本側の対応〜日伊首脳会談の再開
……さて今回注目したのは、当然ながらイタリアです。
2019年のウイグル関連でも後付けで参加。香港ではG7全体として懸念の立場を示したのみで、国連人権理事会の場で自国の立場を明らかにするような声明には加わらない対応を続けたイタリアでしたが、今回はスペインと並び香港・ウイグル両件の問題提起に賛同した形になっています。
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……で、思い出したように日本の外交を振り返ると、面白い話がありました。
この9月末からの外遊に際し、10/3の臨時記者会見では
〉EUをリードするフランス、そしてドイツ、来年前半のEU議長国を務めるポルトガル
〉本年のG20議長国のサウジアラビアとの間では、G20リヤド・サミットの成功に向けて
〉サバーハ・クウェート国首長が9月29日に薨去されたことを受けて、弔問のために向かう
と語っています。特にサウジアラビアに関して
〉特にG20サミット、日本は昨年議長国でありまして、今年サウジが議長国、トロイカとしてですね、リヤド・サミットの成功に全面的に協力をしていく
と語ったのですが、ここでいうトロイカとは当年議長国と前年・翌年議長国が協力体制をとる事を指します。それなのに今回の外遊では次期G20議長国のイタリアは訪問先から外れていましたし、フォローする限りでは茂木外相が2021年のG20ローマサミットに言及した話は見当たりません。
そもそも茂木・ディマイオ両氏が外相に就任して以来、外相会談や首脳会談は行われていなかったのです(唯一の例外として3月の電話会談はありますが、あれは国際電話会合の場でイタリアの窮状を参加各国に訴える一環でしたので)。
約一年半、両者が同席した(あるいは同席予定だった)国際会合の場は複数あったにも関わらず、どちらの意図によるものかは分かりませんが日伊外相会談は避けられ続けており、その間イタリアは西欧諸国において対中姿勢の統一を阻み続けていたのです。
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……それが今回、香港・ウイグルへの懸念声明にスペインと共に加わりました。G7の共同声明に一員として参加した(というより拒否しなかった)のと比較して、一国として中国の政策を咎める立場を明らかにした訳です。
そして日本も反応を示しました。
国連総会提起の翌日(10/07)に、1年半ぶりの日伊首脳会談が行われたのです。
内容としてはさしたる物ではなく、15分の電話会談という形式上のものとも言えますが、この会談によってイタリアの立場表明を日本側が歓迎し、かつ初めて来年のG20サミットに関する協力を申し出た事について評価すべき事ではないでしょうか。
そしてサミットを主導する外相間でなく、コンテ首相との関係修復から外交をリスタートさせた事も、一つのメッセージであったと思われます。
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2020/10/13追加
そしてもう一人、昨年岩屋前防衛相の弱腰対応を糾弾した宇都隆史氏。
彼は今政権において、外務副大臣に就任しました。
そして彼に対する3国家大使の表敬……中央アジアでも元々香港・ウイグル関連の中国側声明に加わっていないウズベキスタン・カザフスタン
また今回の中国側声明から外れたドイツ側の声明に加わったホンジュラス
この時期に立て続けに3ヶ国の表敬を受けた事も、今回の件の一つの象徴だと考えています。