2020/09/17訂正: コソボ・セルビアに関する記述を追加しました
本当に申し訳ありません。
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2020/09/16を以て安倍首相は総理の職を退き、新たに菅前官房長官がその座に就く事となりました。
新たな内閣の話は、ここでは行いません。
とりあえず今回は、辞任を表明した8/28から9/15までの18日間に安倍内閣が行った、あるいは殆どタッチ出来なかった国際的事件について取り上げてみようと思います。
たった半月強の間に、多くの国際的な動きが発生しておりました。今回は今後の政権に対する統一したビジョンなどは記さず、事件自体へのキャプションに留めようと思います。
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1. 日本側が積極的に対応したもの
〉梶山経済産業大臣は、9月1日にテレビ会議形式にて開催された、日豪印経済大臣会合に出席し、豪州のサイモン・バーミンガム貿易・観光・投資大臣及びインドのピユシュ・ゴヤル商工大臣と会談を行いました。
https://www.meti.go.jp/press/2020/09/20200901008/20200901008-2.pdf
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〉9月9日(日本時間同日)、インド・デリーにおいて、鈴木哲駐インド日本国特命全権大使とアジャイ・クマール・インド国防次官(Dr. Ajay Kumar, Defence Secretary, Ministry of Defence)との間で、「日本国の自衛隊とインド軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とインド共和国政府との間の協定」(略称:日・インド物品役務相互提供協定(日印ACSA))への署名が行われました。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100091748.pdf
※上記第2条3にも記されているように、武器弾薬類は今回の協定に含まれません。
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〉9月11日、午後4時頃から約10分間、茂木敏充外務大臣は、エリザベス・トラス英国国際貿易大臣( The Rt Hon Elizabeth Truss MP, Secretary of State for International Trade and President of the Board of Trade of the United Kingdom)との間でテレビ会談を行い、日英包括的経済連携協定(the Japan-UK Comprehensive Economic Partnership Agreement)について大筋合意に至ったことを確認しました。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100092224.pdf
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〉9月12日午前10時頃から午後1時半頃まで、オンライン形式にて、第27回ASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会合が開催され、日本側から茂木敏充外務大臣が出席しました。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100092614.pdf
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……以上、日本側が積極的に対応した国際的活動については、各所記事をご参考願います。
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2. 日本があまり関わっていないもの
〉米国政府は9月11日、8月13日に発表されたイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化に続き、イスラエルとバーレーンの国交正常化が実現したとの声明を発表した。
……アメリカの仲介により、イスラエルがUAEに続きバーレーンとも国交を正常化させました。トランプ政権としては11月の大統領選挙に向けた格好の外交成果ですが、これに対してパレスチナ及びイラン・トルコ・カタールが反発。また中国も態度を明らかにはしていませんが、国連を通したパレスチナ・ガザ地区への食糧支援を行っています。
※後述するアフガニスタン・タリバン和平交渉が、イスラエル・アラブ諸国の国交正常化に反発するカタールのドーハで行われている事には興味が唆られます。なお今回のアラブ諸国の動向について『スンニ派の』危機意識と報じるメディアが在りましたが、カタールやトルコは非スンニ派なのでしょうか。
……なおこの対米・イスラエル関係周辺では、インドが面白い対応をしています。
〉これは氷山の一角であり、最初のステップです、とUSAIDの副管理者であるBonnie Glickは言います。インド、イスラエル、米国は、開発分野と、透明性、オープン性、信頼性、安全性を備えた5G通信ネットワークを含む次世代の新技術で協力を開始したと、最高幹部は語った。
7月にインド・イスラエル間でサイバーセキュリティに関する協力の再確認を行ったのに続き、今月改めてアメリカを含む3ヶ国間で5Gに関する協力を開始しました。この意味では、インドとイスラエルは改めてアメリカによる対中、或いはイスラエルによる対イランの図形に含まれた形になります。
一方、アメリカによる制裁から外れているイラン・チャーハバール港に対してインドは深く関わっており(パキスタンとの対抗の面でも)対イランではインドは微妙な立場であるようです。
※ちなみに関係性は微妙ですが、このインド・アメリカ・イスラエル3ヶ国がコロナ被害が最近になって大きく話題になっている国々であるのは面白いですね。
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〉9月12日、カタールのドーハにおいて、アフガニスタン・イスラム共和国とタリバーンとの間で、アフガニスタンにおける和平交渉の開会式が開かれ、我が国から、鈴木馨祐外務副大臣がオンライン形式で出席しました。同開会式には、主催国のカタール及び和平交渉の当事者であるアフガニスタン政府及びタリバーンの他、日本や米国を含む各国が招待されました。
……このアフガニスタン・タリバンの和平交渉には、アメリカからはポンペオ国務長官が出席していますが、こちらはアメリカの活動殆ど評価されておらず、隣接するインドによる同国人解放を含めた働きかけが大きいと言われています。同交渉にはインドからはジャイシャンカール外相が出席しています。
なおこのアフガニスタンへの対応については、奇しくも「タリバンと密接に結び付くパキスタンに対抗する」インドと「タリバンと結び付くウイグル過激派に対抗する」中国、或いは前述したチャーハバール港(アメリカが同港のみ制裁対象外としたのがアフガニスタンへの輸送目的である事を思い出して下さい)で結び付くイランとが、それぞれ戦略面で同じ方向を向くという奇妙な現象を見せています。
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〉イランのジャリド・ザリフ外相のドイツ訪問は、テヘランが反政府抗議に参加したレスラーを処刑したことを非難している最中に突然中止された。ザリフ氏は月曜日にドイツ、フランス、イギリスの相手と会うことになっていた。しかし、ドイツの報道によると、土曜日に27歳のNavid Afkariが処刑されたため、会議は延期されました。
イラン外相は今週核合意に加わるヨーロッパ各国を訪問、アメリカによる制裁回避に向けた外遊を行う予定でしたが、反政府デモに加わったとされるレスラーへの死刑執行に対する反感を買ったため各国から交渉を拒否された模様です。
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2020/09/17 追加
〉セルビアのアレクサンダル・ブチッチ大統領とコソボのアブドラ・ホティ首相は4日、米ホワイトハウスで会談し、経済関係の正常化で合意した。両国を仲介した米国は、コソボとイスラエルの国交樹立合意も発表した。
〉コソボとイスラエルの国交樹立合意と、セルビアによる在イスラエル大使館のエルサレム移転方針も発表した。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相によると、コソボの大使館もエルサレムに置かれる見通しだ。
イスラエル関係でもあるのですが、アメリカの仲介によりコソボ・セルビア間の経済関係正常化と両国大使館のエルサレム設置が行われる運びとなりました。
セルビアといえば中国の一帯一路政策のヨーロッパ方面出口の一つであり、特に中国保健外交が最も活発に行われた国家の一つ。UNHCRにおける香港・ウイグル関係の抗議でもヨーロッパで唯一中国側の立場を支持していた国家です。
一方のコソボは中国保健外交の対象外となった数少ない国家でもあります。
両国の国交正常化はEU加盟に向けた重要要件とされており、今回のアメリカの働きかけは同時に(イギリスの離脱によりバルカンエリアの加盟に注力し始めた)EUの政策にも合致するものでもあり、またセルビアの中国からの引き剥がしに向けた一つのステップとも言えるかもしれません。
……なお、日本は今年に入り、コソボに駐在官事務所を設置しています。
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おまけ: 安倍前首相の対イラン秘密外交について
〉米国とイランの対話仲介を試みた安倍政権が緊張緩和に向け、数千億円相当のイラン産原油と米国産穀物を、日本を舞台に物々交換する案を極秘に提示していたことが7日、イラン政府筋の話で分かった。
……9/7、共同通信のMohammad Gharabagh氏によるものと思われるスクープですが、国内メディアでの取り上げられ方に反し、国外では殆ど報じられておりません。また国内外共に、この共同通信ソースの情報しか各メディアでは伝えられておりません。
※なお記事の詳細はkyodo+をご参照下さい。
唯一独自取材を行った記事を見つけられたのがイランISNA紙(ペルシャ語)のみですが、
〉ISNAによって得られた情報によると、イランは、日本との友好的な関係と安倍晋三への敬意のため、日本の首相の提案に耳を傾ける用意があることを発表し、米国の当局者の声明には自信がなかったと述べたが、安倍首相のテヘラン訪問の前夜、安倍首相への約束を取り戻し、ペルシャ湾でのいくつかの反安全対策を講じることにより、彼らは事実上彼の努力を無視し、彼が旅行するのを阻止しようとしたが、2か国間の長年の友好関係により、安倍首相は旅行した。テヘランへの旅行を成功させる
という情報のみであり、今回の肝であるアメリカ産穀物とイラン産原油の物々交換についてはこの共同通信以外のソースでは発見出来ませんでした。