補論: “Trust”と“Confidence”の違いから考えるDFFT

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補論:“Trust”と“Confidence”の違いから考えるDFFT


“DFFT(Data Free Flow with Trust)”の中にもあるTrustと、同じく「信用・信頼性」という言葉で訳されるConfidenceの違いについて。


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辞書的な違いだと、Trustを直観的・絶対的な信用、Confidenceを論拠に基づいた信用……など、判るような判らないような注釈が付いています。

しかし近年のデジタル法制、特にG7やG20におけるデジタル関連会合で取り上げられた場合、この例文から二つの違いを理解するのが判りやすいと思われます。


(Development of Confidence-Building Measures)

'The second pillar is “the development of Confidence Building Measures (CBMs).” Cyber activities are invisible and easily transcend national borders. In order to prevent cyber contingencies from developing, it is necessary for governments to understand and share each other’s laws and regulations, systems, policies, strategies and mind-sets, so that we can deepen our mutual trust.'


(信頼醸成措置の推進)

〉第二の柱は,「信頼醸成措置の推進」です。サイバー空間における活動は,中々目に見えませんし,国境を容易に飛び越えます。サイバー活動を発端とした不測の事態を防ぐためには,お互いの法令,制度,政策,戦略及び考え方について理解を深め,共有し,相互に信頼性を高めることが必要です。


『サイバー空間に関するニューデリー会議における堀井学外務大臣政務官スピーチ』

外務省HP 「サイバーセキュリティ 日本のサイバー外交」より
https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/page5_000250.html


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G7伊勢志摩首脳宣言付属文書『サイバーに関するG7の原則と行動』も類似の内容で記されていますが、
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000160279.pdf
https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000160315.pdf
ニューデリー宣言の方が判りやすいのでそちらで。


……簡単に言えば、

  • 「各国の法令,制度,政策,戦略及び考え方について理解を深め,共有」する作業一つ一つで作られるのは“Confidence”、
  • これらの作業を経て包括的に、国家間で作られるのが“Trust”です。

それ故に、個人情報や機密情報を保護する方法を構築しただけでは、本来の意味での“Data Free Flow with Trust”とはなりません。
その保護をもって、各国の制度・政策に見合う摺り合わせを行い、各国と考え方を共有するプロセスを経なければ、DFFTとはならないのです。
そしてこの摺り合わせの各プロセスを具体的にする事こそ、DFFTと本来不可分であったかつての“大阪トラック”の正体だったと類推されるのです。


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以上、『大阪トラックの路線変更(5)』の補論となります。
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/08/02/194037

なおこの文章の元となる、G20大阪サミットで立ち上げられた“大阪トラック”やデータ・フリー・フロー・ウィズ・トラストについて、一連の文章を作成しております。興味があればそちらを……
https://tenttytt.hatenablog.com/entry/2019/06/29/223127


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